米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の余波で、大手消費者金融、武富士が300億円の損失を出した問題が金融界で波紋を広げている。巨額損失が発生した主因は、メリルリンチ日本証券を取りまとめ役に行った仕組み債の価値がサブプライム問題による市場の混乱で暴落したため。しかし、メリルが組成した仕組み債は本来、高い安全性や元本確保の確実性が求められる社債のディフィーザンス(債務の実質返済)には不適切で、「リスクの説明も十分に行われていなかったのでないか」(金融当局筋)との疑義が出ているためだ。
「外資にまんまと食いモノにされた」
仕組み債とは、通常の債券にさまざまな条項を付けた債券。オプションやスワップなどの金融テクニックを使用し、リターンを上げようというものだ。
武富士はこの損失で08年3月期決算の連結最終利益を当初予想の433億円から136億円に大幅に下方修正したが、武富士の株主からすれば「寝耳に水の話」(市場関係者)。このため、水面下では、武富士経営陣に対する株主代表訴訟の可能性を探る動きもある。一方、武富士経営陣には「外資にまんまと食いモノにされた」(同社関係者)との思いも強いようで、メリルに対する損害賠償提訴も検討している。
今回の武富士の一件が対メリル訴訟に発展すれば、あいおい損害保険や滝野川信用金庫などサブプライム関連で巨額損失を出した他の日本の金融機関の間にも、売り手の外資系金融機関に対して損害買収訴訟を提起する動きが波及する可能性もある。実際、米国ではサブプライム関連証券に投資した年金基金や個人投資家らが、実質破たんした大手証券ベア・スターンズやシティグループなどに損害賠償を求める動きが相次いでいる。米国でのこれら訴訟では、当初のサブプライム関連証券の売り込み時のリスク説明はもとより、07年夏のサブプライム危機発生以降、売り手の金融機関側が投資家に対して、関連証券の市場価値が急落していることをきちんと説明せず、損失を拡大させたことが争われている。