歌手の安室奈美恵さん(30)の新シングルが、オリコンランキングの1位の座を獲得した。実に9年3か月ぶりという快挙。ワイドショーなどではその理由を「時代がアムロに追いついた」など特集する一方、専門家からは「これまで安室さんが抱えてきたマイナス要因がなくなって、モチベーションが回復したからでは」という比較的冷めた見方もある。
モチベーションが回復、「がんばりたい」?
新曲「60s 70s 80s」が9年ぶりに首位を奪還した
2008年3月24日に発表された3月31日付けのオリコン・シングルランキングによると、安室さんの新曲「60s 70s 80s」(3月12日発売)が、その前の週の初登場2位から順位を上げて首位を獲得した。シングルのトップ10入りは14年連続で女性アーティスト最長だが、首位獲得は98年の「I HAVE NEVER SEEN」以来9年3か月ぶり。ながらくトップの座から遠ざかっていたことになる。
今回の作品は、60年代~80年代の海外曲を日本語でリメイクしたもの。安室さんは01年に小室哲哉さんのプロデュースを離れて以来R&B(リズム・アンド・ブルース)色の強い作品をリリースしており、今回の作品もこの流れに沿ったものだ。
このことから、今回の「首位奪還」を報じるメディアでは、「CMのタイアップが奏功した」との見方のほか、「安室さんの『路線転換』が受け入れられた結果なのでは」といった論調が目立つ。特に、3月26日朝放送の日本テレビ系ワイドショー「スッキリ!」では、「時代がアムロに追いついた」とまで持ち上げて見せた。
ところが、専門家からは、違った分析も聞こえてくる。新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・エディターでJ-CASTニュースモノウォッチでもコラム「音盤見聞録」を担当している加藤普(かとう・あきら)さんは、復活の理由を大きくふたつあげる。ひとつは、「モチベーション説」だ。
加藤さんは、「売れる要因」について、
「アーティストの作品の売れ行きというのは、もちろん『メーカーがどれくらい一生懸命プロモーションをするか』というのはあるのですが、アーティスト自身の『売りたい』とか『頑張りたい』といった気持ちが非常に大きく影響します」
と説明。
浜崎、倖田が女王の座から転落したため?
首位から遠ざかっていた理由については、このように分析する。
「彼女は、ライフスタイルというか、その私生活を含めて、普通の女の子に人気がありました。結婚・出産がその人気に影響することはなかったのですが、離婚は人気に影響を及ぼすことになったのだと思います。離婚でモチベーションの低下があったのでは」
安室さんは97年10月に結婚、翌年5月には長男を出産したが、02年に離婚。それ以外にも99年には、母親が車ではねられて殺害されるという惨事に見舞われてもいる。これらのマイナス要因がモチベーションに影響し、低迷が続いていたのではないのか、という見方だ。そして、今回の「首位奪還」については
「離婚などから時間がたって、『吹っ切れた』ということで、モチベーションが戻ったのでは」
と推測する。もうひとつの理由が、「クイーン不在説」。加藤さんによると、
「世論は『クイーン』を待望するもので、これまでは浜崎あゆみさんや倖田來未さんがその役割を果たしてきました。ところが、お二人は最近では『クイーンの座』にあるとは言い難いのでは」
と、浜崎さんの持病や倖田さんの「羊水発言」で、事実上女王の座から転落したことから、安室さんが「空席のポスト」に滑り込んだ、という説だ。
スキャンダルで「失脚」した形の倖田さんだが、コンサートツアーの準備を進めている様子も伝えられており、復権も遠くないとされている。浜崎さんも、デビュー10周年ツアーとアジアツアーを控えている。この二人が復活して初めて、安室さんが本当に復活したかが明らかになりそうだ。