「PTAとの決別宣言」をしたとして、連日メディアを賑わせている和田中学校の藤原和博校長。2008年4月1日から同校のPTAは事実上廃止され、地域の協力者で作る「和田中地域本部」がそれに代わる。東京都のPTA関係者は「我々から離れてやっていけるのか」「学校教育が何なのか全然わかっていない」などとヒステリックに批判。反響が大きいためか、藤原校長は「PTAがいらない、とは言っていない」と困惑気味だ。
「学校教育が何なのか全然わかっていない」
和田中ウェブサイトの「校長室」では「PTA改革」について説明されている
藤原校長は08年3月22日に行われた和田中の学校運営協議会で、同校のPTAは地域の協力者で作る「和田中地域本部」の一部門とし、杉並区のPTA協議会からも脱会する、と報告した。区の協議会を抜けるということは、都や全国のPTA組織から抜けることを意味する。「地域本部」とは、リクルートOBの藤原校長が5年前に作った組織で、地域住民や主婦、大学生らがボランティアで学校の支援活動をしている。塾講師が有料で受験対策をする「夜スペシャル」や、土曜日に生徒が教室で自習する「土曜寺子屋(ドテラ)」のサポートなどが知られている。
PTA廃止の狙いは大きく2つ。まず、協議会に加盟していることで発生する「仕事」の負担を無くし、子供の教育や子供とのコミュニケーションに多くの時間を割けるようにする。もうひとつは、「地域本部」を核に据え、従来の保護者と教員によるPTAという狭い関係から脱却し、大量の支援者を引き入れること。地域全体で子供を支える仕組み(地域コミュニティー)を再構築しようというのだ。
しかし、「PTAとの決別宣言」に都のPTA関係者は大反発している。ある関係者はJ-CASTニュースの取材に対し、
「地域再興というが、和田中のある地域以外に通学している生徒もいる。また、教員が蚊帳の外という印象もあるし、子供の視点というのも欠けている。学校教育が何なのか全然わかっていない」
などとヒステリックに話した。「PTAは不要」と取れる藤原校長の「宣言」は、全国的にPTA関係者の反撥を招いているはずだ、と同関係者は言うのだ。
藤原校長はJ-CASTニュースの取材に対し、
「私はPTAはいらない、とは言っていません。(教育や地域コミュティーなどの)再考が必要ということなんです。和田中独特の事情もありますし、私が『地域本部』で5年間積み上げてきたことを実現化していく、ということなんです」
と話した。
PTAは加入率が低下、「曲がり角」に来ている
和田中がある杉並区の教育委員会はJ-CASTニュースの取材に対し、東京都のPTA組織は時代の流れとともに「曲がり角」に来ていて、何らかの施策を講じなければならない状況のため、藤原校長のアイディアが実を結ぶのかどうか見守りたい、と話した。TBS系「ニュース23」の調査によれば、東京都の「PTA協議会」への加入率は99年が中学校で72.6%、小学校で71.2%だったのに対し、07年は中学校が53.1%、小学校が20.5%に落ち込んでいる。組織率がこれだけ落ち込んだ背景は、PTA役員のなり手がいないことや、夫婦共稼ぎの家庭が増えたため、PTA活動ができず、形骸化が進んだためなのだという。ただし、これは東京の特徴で、地方ではほとんどの学校が協議会に加盟している。
和田中のPTAが今後どういう道を選択するかは、08年5月に行われる同中学のPTA総会で決まる。方向としては藤原校長の方針通りに進むようだが、
「PTA協議会から脱退すれば、デメリットが出る可能性もありますので、1年間の試行期間を設けています。1年後に協議会へ復帰するという道も残しているわけです」
と同教育委員会では説明する。民間出身の藤原校長は任期満了により08年3月末で退任する。