「小泉改革」以来、「日本は競争型社会を目指すべきだ」という声が多いが、最新の調査では、「『平等社会を目指すべき』」との声が、「競争社会」を上回った。「終身雇用」を支持する声も9割に迫る勢いで、「景気との関係で、安定志向が高まっているのでは」と分析されている。
「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」との回答が急落
景気低迷で安定志向が強まっている(写真はイメージ)
今回の「勤労生活に関する調査」を行ったのは、厚生労働省所管の独立行政法人、労働政策研究・研修機構。2007年9月から11月にかけて、全国の20歳以上の男女4000人に対して訪問面接調査を行い、2315人から有効回答を得た。調査は今回が5回目で、その結果が08年3月24日発表された。
この調査で、日本が目指すべき社会について聞いた質問では「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」との回答が99年の調査開始時から一貫して4割程度を保っており、04年では42.3%だった。ところが、今回の調査では一気に31.1%に転落したのだ。逆に04年調査では30.6%だった「貧富の差が少ない平等社会」を望ましいとする声が43.2%にまで急上昇し、これまで続いてきた「競争社会」を「平等社会」が逆転した。
さらに、「終身雇用」を支持すると答えた人の割合は実に86.1%で、前回04年調査よりも8.1ポイント上昇。加えて、一つの企業に長く勤めることを望ましいとする声は49.0%(同6.1ポイント増)なのに対して、いくつかの企業を経験する「複数企業キャリア」を最も望ましい声は24.6%(同1.5ポイント減)にとどまった。
これらを見ていくと、非常に保守的傾向が強まっているようにも見える。調査を行った労働政策研究・研修機構に聞いてみても、
「景気との関係もあって、安定志向が高まっていると言えるのではないでしょうか」
とのことで、最近の景気減速感が調査結果に反映されたとの見方だ。
フリーターの否定的受け止め方強まる
さらに同機構では「安定」というキーワードを強調。その根拠として、フリーターの受け止められ方を挙げる。フリーター観について聞いた質問に対して「自由で多様な働き方である」と肯定的に捉えたのは26.8%にとどまったのに対し(04年比13.1ポイント減)、「生活を不安定にする働き方である」と否定的受け止め方をしているのは、実に88.0%(同2.5ポイント増)にのぼっている。このような状況に対して、同機構では
「やはり、雇用の不安定化が指摘されていることもあって、安定を求める動きが強まっているように思います」
と話している。
こう見ていくと、「会社との一体化」が強まっているかのように見えるが、一概にそうとも言えなさそうだ。「福利厚生の給与化」を求める声が多くなっているのだ。いわば「社宅や保養所にかけるコストがあるのならば給料を増やして欲しい」という声だが、このような意見を唱える割合が99年には50.8%だったのに対し、04年には61.1%、今回は64.5%まで伸びている。原因については、同機構では
「そのような考え方が普及している、ということはあるのだとは思いますが…」
と話しており、はっきりとした原因は分からない様子だったが、「仕事以外では会社に構って欲しくない」といったトレンドが生まれている可能性もありそうだ。
今回の調査対象のうち、若者(20~34歳)の割合は15.1%。今回の調査結果では、年代ごとの回答は公表されていないが、「比較的若年層の方が独立志向は強い」といい、詳細は3月末に発表予定の報告書に掲載されるという。