ガソリン税などの暫定税率が延長できず、4月から税率分の1リットル25円が下がると見込んで、消費者の買い控えが始まっている。ガソリンスタンドでも、3月の在庫を減らして備えようとの動きが出ており、関係者の間では、4月にガソリン購入が殺到して品切れが続出するのでは、と混乱を懸念する声が出ている。
10リットルだけ給油するケースは増えている
ガソリンスタンドは4月に購入殺到?
ガソリン価格が下がると見られているのは、民主党などの反対で、暫定税率を維持するための租税特別措置法改正案が国会で07年度内に成立するめどが立たないため。ただ、ガソリン税は製油所からの出荷時に課税される「蔵出し税」で、3月に出荷されたガソリンが4月に販売された場合、原則として暫定税率分が上乗せされる。とすると、いつから価格が下がるのか。
石油元売り会社の出光興産の広報室では、J-CASTニュースの取材に対し、「ガソリンスタンドでは通常、9日間が在庫期間です。ですから、直ちに価格が安くなるわけでもないと考えられます」と説明。とはいえ、価格をコントロールできない以上その動向は不透明だといい、「価格にばらつきが出て、混乱が出るのが心配。なんとか安定供給に全力を尽くそうと思っているのですが…」と不安を示した。
消費者には、値下げを見込んで買い控えの動きもあるようだ。都内で8店を展開するあるガソリンスタンド経営者は、J-CASTニュースに、「お客さまは価格にとてもシビアです。ここ数日、1000円、10リットルに限定して給油するケースは確かに増えていますね」と打ち明けた。
ネットを調べると、ブログ「迷走する・・・のつぶやき」には、「軽自動車ユーザーの我が家でさえも、万一の事態に備えてガソリンタンクを空っぽにしていますよ。これから日に日に買い控えが進み、4月になるとスタンドに車が押し寄せ、大混乱になることでしょう。数ヶ月前、ガソリン価格が大幅値上げになる前夜、スタンドに車の行列ができているのを実際に経験している私としては、暫定税率が一時的に廃止となるとそれが再現されるものと思っています」と書かれていた。
3月の在庫を減らすスタンドも
4月1日から値下げの可能性について、前出のスタンド経営者は、「20円とか値を下げてくるところも出てくるのではないかとにらんでいます。私どもも、早めに安くしなければならないエリアもあります」と話した。産経新聞の3月23日付記事によると、値下げが行われた場合、石油連盟の試算で、1日当たりの全国でのガソリン平均販売量が現在の約15万キロリットルから約200万キロリットルに急増する可能性があるという。
競争激化を見越して、このスタンド経営者は、自衛することを考えているとも。「できるだけ3月の在庫を少なくして、4月からの入荷を増やしたい。品切れもありうるので、元売りと交渉するつもりです」。一方、タンクローリーを走らせている静岡県内のある運送業者は、J-CASTニュースの取材に、「月末にかけてオーダーが絞られてきており、4月に入って運んでくれというスタンドが増えています。でも、タンクローリーの負担も限界があり、混乱を起こす可能性がありますね」と話した。
改正案は、参議院で成立しなくても、衆議院で再可決して4月下旬に成立するとの見方もある。しかし、その場合についても、出光興産では、「また、先に給油しておこうと客がスタンドに殺到して、同じような事態になる可能性があります。消費者の行動が見えないのが悩み」(広報室)と話す。
競争が激化した場合、スタンド側が不利益を被る事態も考えられる。前出のスタンド経営者は、「うちには、4月1日からすべての店舗で25円安く売る力はありません。(スタンドが負担した)税金の還付を財務省が行うとか、元売りが一時的に仮払いするとかがクリアにならないと困ります」と当惑した様子だった。