CO2を現実に減らすには技術の「輸出」が大事
京都議定書を批准していない米国や、CO2の削減義務を負わない中国やインドなどが地球温暖化の問題に取り組むAPP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)という枠組みがある。2006年1月に設立され、じつは日本もこれに参画している。発電および送電、鉄鋼、アルミニウム、セメント、石炭鉱業、よりクリーンな化石エネルギー、再生可能エネルギーと分散型電源、建物および電気機器の8つのタスクフォースで組織され、業界ごとにCO2の削減策を具体的かつ自発的に進めていくことを提案し、実践している。
たとえば、日本の電力業界は過去2度のオイルショックの経験から、火力発電所のムダを省き、熱効率を上げる努力をしてきた。それにより、「30~40年経っても、熱効率が変わらないのは日本だけ」と、他の先進国も驚くような高い技術を維持している。この技術をAPPのプロジェクトを通じて、実際に開発途上国の火力発電所を訪れ、各国の技術者とともに発電所の熱効率の改善について議論している。熱効率の悪いインドや中国といった国々で優れた日本の技術を生かしてもらって、現実のものとしてCO2を削減しようというのだ。
このような取り組みは「セクトラルアプローチ」と呼ばれ、分野別に優れた技術を世界で共有する取り組みとして進められている。日本の地球温暖化防止の技術は海外に「輸出」されていて、成果をあげているというわけだ。いま世界中がCO2削減に取り組んでいるが、日本の技術で目に見える削減を行うことが日本の存在感を示すことにもなりそうだ。