トヨタ自動車が2007年9月のフランクフルトモーターショーでコンセプトモデルを初公開し、同じく10月の東京モーターショーでも注目を集めた超小型車「iQ」が08年内に国内発売されることが決まった。全長3メートルに満たない小さなボディーだけでなく、「既成概念を覆す」クルマづくりがいくつも採用されている。その結果、燃費はリッター30キロを超え、プリウスをしのぐのは確実だ。
CO2削減の「時代の申し子」のような車
超小型車「iQ」に注目が集まっている
「iQ」にはパワートレーン、ステアリングからエアコン、シートまで室内空間を稼ぎ出すためのあらゆる工夫が盛り込まれ、大人3人と子ども1人が乗ることができる。トヨタは「排気量やサイズといった従来の考え方にとらわれない車」(岡本一雄副社長)として売り出す考えだ。
iQはCO2削減の時代の申し子のような車といえる。走行1キロメートル当たりのCO2排出量の目標は100グラム以下で、ハイブリッドカー「プリウス」の104グラム(EU基準)を下回り、トヨタ車で最低。燃費性能はプリウスを上回る。10・15モードより実際の走行に近いといわれる新しいJC08モードでプリウスはリッター29・6キロメートルなので、iQがリッター30キロメートルを超えるのは確実だ。
日米欧で実施される自動車燃費規制では、企業の新車平均で1キロメートル当たり130グラムを求める欧州連合(EU)の規制案がもっとも厳しいと見られている。iQは欧州においてトヨタ車全体の燃費を引き下げる効果が期待されている。
国内では燃費改善対策のほかに、ダウンサイジングする需要への対策の側面があり、むしろこちらの意味のほうが大きくなるかもしれない。そのねらいは「クラスレスなエコカー」というものだ。
サイズが大きい「パッソ」「ヴィッツ」よりも高価?
自動車の世界では車両のサイズと排気量が大きくなるにつれて価格も高くなるという図式が長年にわたり踏襲されてきた。その例外にはコンパクトながら1クラス上の価格が定着したBMW「ミニ」があるが、プリウスもまたサイズを超えた売れ方をしている。トヨタディーラーによると「クラウン」を乗り継いできたベテランドライバーが「運転しやすいサイズで燃費のいい車を」とプリウスを選択するケースは少なくないという。
iQは排気量1リットル前後の通常のガソリンエンジン車(欧州向けにディーゼルも用意される)ながら、その環境性能や明確な意図を持った小ささ、軽さでプリウスと同じように車のヒエラルキーを飛び越える存在になることが狙いになっている。価格は未定だが、よりサイズが大きい「パッソ」「ヴィッツ」よりも高価になる可能性があるという。
iQの謳い文句は「超高効率パッケージカー」。助手席側のインパネを削ってシートを前に配置し、助手席側後席のスペースを稼ぐなど、思い切ったアイデアも採用されている。車離れが進む国内市場にインパクトを与えることができるか、業界がもっとも注目する1台である。