精神科医・和田秀樹さんインタビュー(下)
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「知らなかった」といわれるものを描き出したい

次の作品の構想もできていると語る和田秀樹さん
次の作品の構想もできていると語る和田秀樹さん

――ガンの問題とか緩和ケアというものをテーマにしようと思ったのは、なぜですか?

和田 「受験のシンデレラ」のガン治療アドバイザーをお願いした東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部長の中川恵一さんは、僕の大学時代の同級生です。2、3年前、彼に誘われて、精神科医の立場で東大の緩和ケア研究会で講演したのが、その勉強のきっかけです。その中川が、「僕は死ぬんだったらガンで死にたい。突然、脳卒中や心筋梗塞で死んだら、やりたいことをやり残したまま死ぬことになるし、恥ずかしいものを残したまま死ぬかもしれない。ガンだったら、生きている期間が決まっていて、その間、頭も冴えているし、体も動けるんだったら、これほど死ぬ準備期間のある病気はないのに、なぜ、みんなは嫌がるんだろう」と言った。みんながガンを恐れるのは、ガンは痛みや苦しみを伴うからです。医者も一般の人も緩和ケアをホスピスのことだと勘違いしているんだけど、緩和ケアは痛みや苦しみをとる医療なんです。ホスピスは確かに安らかに死ぬためのケアで、緩和ケアの重要な要素ですが、ホスピスに入る前の余命を、ガンを抱えながら最後まで生きることを助ける医療が緩和ケアの大事なポイントなのに、そこがみんなに知られていない。
「受験のシンデレラ」では、ガンであと1年半しか生きられない男が、最後の仕事に貧乏な家の子を東大に受からせると決める。その男が元気にやっている姿がいかさまに見えないようにするためには、緩和医療の考え方を持ってくるのが絶対いいと思った。

――受験生が主人公ですね。

和田 昔ならどんなに貧しい家でも教育ママというのがいた。でも、自分の幸せのためやエステ通いにはお金をかけるのに、子どもの塾代はもったいない、ひどい場合は給食費も払わないという教育ネグレクトママがたくさんいる。僕らの親の世代は、どっちかと言うと貧乏で大学に行けない人がたくさんいた。でも、今の親世代はあんなに受験勉強をたくさんしたのに結局行きたい大学に行けなかったじゃないって思っている人がたくさんいるわけです。だから、無理に勉強しても結果がしれていると思い込んでいるのでしょう。
教育ネグレクトママが多いなかでゆとり教育が進められると、例えば小学校の間に分数の掛け算を教えないだとか、中学校になっても二次方程式を教えないということで、僕も受験産業に関わっているからよくわかるんですけど、高校2年、3年生にもなって小学レベル、中学レベルで穴がポロポロある子がいっぱいいるわけですよ。そういう子どもを想定して、今の教育ネグレクトやゆとり教育の犠牲者でも2年あれば立ち直らせることができるという設定でやってみようと思った。そこは、この映画にお金を出すことになった教育産業というのが、受験生に代わって受験勉強計画を東大生が立ててあげるというビジネスで、僕が経営してきたもの。経験が十分にあります。
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