米金融大手シティグループは2008年3月11日、日興コーディアルグループとの事業統合計画を発表した。それぞれの持ち株会社を合併させ、証券、銀行などの業務を整理して傘下にぶら下げる。グループの事業体制を明確に打ち出す狙いだ。ただ、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で傷ついた米シティが日本戦略をどう描いているのかは依然、不透明だ。
日興アセットマネジメントは、将来、株式上場させる考え
シティは08年1月、国内初の三角合併方式で日興を完全子会社化した。しかし、重なる分野が多いグループの組織再編についてはこれまで明らかにされていなかった。
完全子会社化から約1カ月後にようやく公表された事業統合計画によると、シティの日本法人、シティグループ・ジャパン・ホールディングス (CJH)と日興のそれぞれの持ち株会社が5月に合併し、「日興シティホールディングス(HD)」を設立する。さらに、個人向け証券業務を担う日興コーディアル証券と法人向けの日興シティグループ証券を1年以内に統合させる。また、シティバンク銀行と日興シティ信託銀行を2009年末に新しい持ち株会社の傘下にそれぞれ配置する。銀行、証券の業務を一本化し、効率的な総合金融サービスを強化する考えだ。
一方、資産運用会社の日興アセットマネジメントについては、将来、株式を上場させる考えであることも明らかにした。日興の子会社で投資銀行業務を担う日興プリンシパル・インベストメンツは、米シティの傘下に移管する。新しい持ち株会社の会長兼社長には、CJHのダグラス・ピーターソン最高経営責任者(CEO)が就く。
米シティは今、難しい局面に遭遇している。サブプライムローン問題では巨額の関連損失を計上し、中東からの出資受け入れを決めるなど、経営の建て直しが急務となっている。サブプライムローン問題の余波はいまだに続いており、米国では金融システム不安が広がるなど、環境は厳しい。
シティはグループ内の人員削減が課題
そんな中、事業統合計画を発表したピーターソンCEOは、「日本に完全にコミットするシティの姿勢は変わらない」とあえて強調した。米シティの首脳はサブプライムローン問題のあおりで退任したが、ピーターソン氏が日本事業を引き続き担うことで、日本戦略は不変だというサインを市場に発信したともいえる。
しかし、シティはグループ内の人員削減が課題とされており、国内では日興シティ証券の従業員の1割に当たる170人の削減を検討しているとも伝えられている。サブプライムローン問題の影響に揺れるシティが今後、日本での事業展開をどうとらえていくかは実際に未知数だ。今回の発表でも、組織再編計画が示されただけで、具体的な事業の進め方については明らかにされなかった。
振り返れば、ちょうど1年前、日興は有価証券報告書の虚偽記載(利益水増し)問題で、東京証券取引所の上場廃止の審査という瀬戸際に立たされていた。上場は維持したものの、今や完全なシティの子会社。この先、日興がいかなる方向に進むか、まだ見えてこない。