円相場が1ドル96円にまで急上昇するなかで、外貨預金に投資マネーがジャブジャブ流れ込んでいる。100円突破した段階で、「いましかない」と個人投資家が動き出したようで、この外貨シフトはやみそうにない。大手銀行でもオペレーションが追いつかないほどの動きだ。インターネット専業のソニー銀行では「アクセスが増え、システム部が厳戒態勢を敷いている」という。
取引集中しても大丈夫なように、システム部が厳戒態勢
2008年3月13日に、1995年11月以来12年4か月ぶりに1ドル100円の大台を突破した円相場はその後も上昇し、17日には1ドル97円近辺で取引された。米国の金融不安によってドル売りが加速する展開となり、同日昼前には1ドル95円77銭をつけた。円相場は1ドル100円を突破して以降も、円高・ドル安が一段と進んでいる。07年夏に米国のサブプライム問題が顕在化してから、円高・ドル安傾向が鮮明になっていたものの、「円がどこまで上がるのか」読めきれず、投資マネーを一時凍結して「模様眺め」を決め込んでいた。
インターネット専業で、外貨預金の獲得に積極的なソニー銀行は、そんな個人投資家心理を察して、この3月2日までは円定期預金で一時的に資金吸収を図るなど、外貨預金をやや抑えぎみに推進していた。それでも、同行の外貨預金残高は2月末で2300億円弱と、07年12月末と比べて約310億円増えた。そのうちの54%が米ドル建てで占めている。
ソニー銀行によると、「2月28日以降から、ジワリといった感じで増えてきて先週末(3月13、14日)には動きが活発になりました」と話す。2月28日は1ドル105円あたりで推移していて、このときに「100円」をにらんだ動きがはじまっていた。
3月17日にはアクセスや、カスタマーセンターへの問い合わせが相次いだ。「外貨預金をしたい」という問い合わせは、「ふだんは全体の5%程度なのに、先週末あたりから15%ぐらいになっています」としている。同行には約60万の外貨預金口座があるが、「取引が集中しても大丈夫なように、システム部が厳戒態勢を敷いています」という。
「特別なセールスをしているわけではないのに」
みずほ銀行も外貨預金について、「特別なセールスをしているわけではないのに、オペレーションが追いつかないほど」と、急増に驚きを隠さない。同行は、「これまで待機していた個人投資家が、想像していた以上の円高になったことで、『いましかない』と一気に動いた」とみている。
とはいえ、1ドル95円近くまで円高が進んだことで、含み損を抱えた個人投資家も少なくない。米国景気の悪化や金融市場の混乱が続くなかでドル売りの流れがすぐには収まりそうになく、円高がさらに進展すれば含み損が膨らむことになる。ただ、「これ以上の円高はない」と予測、新規に外貨預金をする投資家はさらに増えそうだ。