武藤氏でダメな理由が不明確
新聞各紙が指摘しているのは、「武藤氏、不適格」の理由がはっきりしないことにある。理由とされる「財政と金融の分離」も、武藤氏が元財務省事務次官であり、「ミスター財務省」だったことがひっかかっているだけにすぎない。
歴代の日銀総裁でも、たとえば澄田智氏や松下康雄氏など旧大蔵省出身の総裁はいた。速水優氏-福井総裁と日銀出身者が続いたが、1969年の佐々木直氏以降の人事は日銀出身者と旧大蔵省出身者が交互に就いていたし、財政当局の出身者が中央銀行のトップに就くのは欧米の例でもめずらしいことではない。なぜ、武藤氏ではダメなのか、説得力に欠けている。
しかも武藤氏に代わる総裁候補についても、手続き上とはいえ、政府が提案してきた人物をみて検討するというのだから、姿勢としてはあまりに「高飛車」。「だったら、民主党は誰ならいいのか」という声が聞こえてきそうだ。
毎日新聞の3月12日付の社説には、「じつは民主党も一枚岩ではない」とある。それによると、小沢一郎・民主党代表は「武藤氏昇格を容認し意見集約しようとしていた」としている。ところが、それをまとめきれなかったというのだ。
いずれにしても、民主党にとって「逆風」ともいえる、こうした論調についてどう受けとめているのか、J-CASTニュースの取材に「国会の最中で対応する者がいない」とのことだった。