米大手投資ファンド、サーベラスが筆頭株主となっている「あおぞら銀行」の経営が迷走している。2008年2月下旬には、元農林中央金庫の有名なファンドマネージャーで、あおぞら銀が鳴り物入りで経営トップに迎えたはずの能見公一氏(62)を最高経営責任者(CEO)職から突然解任。後任に米バンク・オブ・アメリカの中南米担当などを務めたものの、日本での金融ビジネスには精通しているとは言い難い人材を起用するなど、戦略性が一向に見えないからだ。
東京海上やオリックスは経営から距離を置く?
一方で、サーベラスは3月3日にはあおぞら銀の株式をTOB(株式公開買い付け)で発行済み株式の8%を上限に買い増すと発表。同行への出資比率を現在の37.5%から最大45.5%に高め、経営への関与を強める方針を打ち出した。市場ではこれをきっかけに、あおぞら銀の発行済み株式の約9%を握る大株主である東京海上日動火災保険やオリックスがサーベラスのTOBに応じて保有比率を減らし、東京海上日動火災保険やオリックスが経営から距離を置くのではないかとも取りざたされている。
あおぞら銀は2006年11月に株式上場を果たしたが、その後は経営が振るわず、株価は上場時の売り出し価格(570円)を一度も上回ったことがない。さらに、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に絡む多額の損失計上によって、08年3月期決算も大幅な減益になる見通しで「東京海上日動やオリックスがこれ以上、あおぞら銀の大株主でいるメリットはない」(関係筋)と見られるからだ。
サーベラスは、あおぞら銀を自らの資金繰りのために利用?
それでは、サーベラスがそんな経営不振のあおぞら銀への経営関与を強める理由は何か。市場や金融当局の間では「サブプライム問題の拡大で市場や投資家から企業買収などのためのリスクマネーの調達が困難になったサーベラスが、あおぞら銀を自らの資金繰りのための貯金箱=機関銀行化しようとしているのでないか」との懸念が浮上している。実際、能見前CEOは地域金融機関との連携強化や住友信託銀行との包括提携などで中長期的な観点からあおぞら銀の経営立て直しを志向。これに対して、サーベラスはあおぞら銀を早期に転売して投資資金の回収を図るか、さもなければ、自らの米国を中心とした企業買収など投資案件に積極的に関与させて、「有効活用」を図ろうとしていたとされる。「この経営方針の対立が唐突なCEO更迭劇に発展した」(同行関係者)ようで、今後、サーベラスがあおぞら銀をどう料理するのか注目されている。