高齢者ドライバーによる交通事故が増え、免許をどうするかの問題が深刻化している。交通網が都市部ほど発達していない地域では、日常生活でクルマを手放すことがなかなか出来ないという背景もある。そうした中、地方自治体の中には公共交通機関の運賃を無料にしたり、乗車券を交付するなどして、高齢者ドライバーの「免許返上」を10倍近く増やすところも出てきた。
高齢ドライバーによる事故は10年間で2倍以上
警察庁が2008年3月4日に発表した「交通事故の発生状況」によると、2007年中の交通事故による死者数は5744人で、7年連続で減少した。しかし、運転者(原付以上)による交通事故件数を年齢層別にみると、65歳以上の高齢者ドライバーによる事故は前年比で3108件(3.1%)も増えた。高齢ドライバーによる事故は増加傾向に歯止めがかからず、10年間で2倍以上に膨れ上がっているというのが実情だ。
同庁は、1998年に運転免許証の自主返納制度を導入。高齢などの理由で身体機能が低下した人や、運転免許が不要になった人が運転免許証を自主的に返納しても、「運転経歴証明書」の交付を受けることできるようにした。しかし、運転免許証を身分証代わりにしている人にはある程度の効果があるが、事故が実際に起きやすい、日常生活でクルマを使っている人をなかなか減らすことができない。07年9月25日付けの毎日新聞によれば、65歳以上の運転免許保有者に占める返納比率は0.21%にとどまっている。
そんななか、高齢者ドライバーの免許返上を促す独自の取り組みを行う地方自治体が出てきた。
富山県富山市は「高齢者運転免許自主返納支援事業」を06年4月1日から導入した。運転免許を自主返納した65歳以上の人に、車に代わる公共交通機関の1年間分の乗車券(約2万円相当)を支給するというもので、それまで年間40人前後だった自主返納者が06年度で507人にまで増加。07年度も380人程度の高齢者が運転免許の自主返納をする見込みという。