日本郵政(JP)グループのゆうちょ銀行が、同じグループの郵便事業会社の日本郵便ではなく、ヤマト運輸にテキスト発送を頼んでいた。JP本体は、傘下のゆうちょ銀の対応を批判したが、ネットでは、「グループ内でも競争させるのが当たり前」といった、ゆうちょ銀支持が圧倒的だ。
郵便事業会社が参加しないまま一般競争入札を行う
グループ会社間でほころび(?)も出た日本郵政の本社
ゆうちょ銀行では2008年2月中旬、全国約2万4000の郵便局に、社員研修に使う預金保険機構制度のテキストを送ろうとした。まず郵便事業会社に相談したが、あて名作成や仕分けなどの作業について契約高の話がまとまらなかったらしい。そこで、同社が参加しないまま一般競争入札を行い、宅配便最大手のヤマト運輸が落札、その後同社のメール便でテキストを発送した。
その背景には、新聞各紙によると、2007年10月1日の民営化で分社化してから、グループ各社が個別利益追求を優先し始めたことがあるという。
一方、郵便局からは、同じグループ会社を使わなかったことに非難が上がった。これに対し、JPの西川善文社長が、「極めて遺憾」とゆうちょ銀や郵便事業会社の対応を批判する事態になった。
ところが、ネット上の反応は違っている。ブログやミクシィを見ると、ゆうちょ銀を支持する声が圧倒的なのだ。
ブログ「冒険少年にゅーす塾~Hatena-Ver.~」は、日記で
「この社長何言ってんだか。僕に言わせれば『同じグループだからと言って甘えていては他社と戦うための競争力などつくはずがない』だと思うよ?ゆうちょ銀行の判断は正しいんじゃない?『民営化』の意味がわかってないでしょ?」と声を上げた。また、ブログ「とほほの通風日記」では、
「ま、早い話が、ライバル企業のサービスを競争見積もりの結果、一番安くて、完璧そうで、信頼に値すると踏んで、採用いたしましたあああああ。て、事(中略)競争見積もりの実行を考えた職員さらには、ライバルの採用に踏み切った方の勇気と、英断て やっぱ、どう考えても凄いと思う」
とゆうちょ銀の対応を賞賛した。
郵便事業会社の作業能力に課題
ところで、なぜゆうちょ銀と郵便事業会社の話がまとまらなかったのか。
一部新聞では、郵便事業会社が煩雑な作業に難色を示したとしている。これに対し、同社渉外広報部では、その事実を否定し、ゆうちょ銀でも、「会社間のことなので、コメントは差し控えたい」と答えるのみだ。
テキスト発送が入札方式になったことについて、同行では、
「郵便で送る場合は、郵便事業会社にお願いすることを考えます。今回は、大量の冊子を倉庫から搬出して、大量のあて先にラベルを張って送る作業です。そのような仕事を請け負っていただける業者、ということで実施しました」
と説明する。
郵便事業会社は、こうした仕事も行っている。しかし、相談がまとまらなかったということは、作業能力がなかったということにならないか。
ネット上では、同社に対する批判が出ている。ブログ「おやじの戯言綴」では、
「身内から裏切られていたとは・・・洒落にもならない(中略)一般競争入札にすることを回避できないぐらい日本郵便の配送料が高いのなら、日本郵便も『勉強』してもらわないと」
と苦言を呈した。また、ブログ「流されるままトレード日記」では、
「まだまだ意識的に民営化されてないよね。ちょっと前にローソンと提携して、郵便局にコンビニを併設させるとか報道されてたけど、そんな繁雑作業の極みみたいなコンビニ業務が郵便局員に勤まるとはとても思えないんですけど」
と感想を漏らしていた。
08年の年賀状販売に当たっては、郵便事業会社が郵便局会社とは別に郵便局前に特設販売所を設けて話題になるほどの商魂を見せた。結果的にテキスト発送で「使えない」会社になった郵便事業会社が、今後生き残るには、煩雑な作業でも低コストで対応できる能力をいかに磨くか、という点にもかかっているようだ。