東芝の損失額は数百億円規模
撤退に追い込まれた東芝の損失額は数百億円規模とみられている。ただ、東芝の西田社長は「一日も早い意思決定が必要だった。状況の変化には機敏に対応する」と早期撤退の必要性を強調した。ソニーが1975年に「ベータ方式」のビデオを発売してから、88年の「VHS方式」併売に踏み切るまで13年を要している。これに対し、東芝はHD事業に発売からわずか2年で見切りをつけたわけだ。
西田社長は2005年の就任以来、成長分野と位置付ける原子力や半導体には重点投資する一方、大胆なリストラを断行し、「選択と集中」を加速してきた。HDでも判断が注目されたが、撤退と同時に総額1兆7000億円を投じてフラッシュメモリーの新工場を2カ所に建設することも発表した。「HDの傷口を最小限にとどめ、事業の集中を急ぐべきだ」との判断とみられ、メンツを捨てて早期撤退を決断し、名より実をとった格好だ。