米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題が起きた2007年夏以降、低迷が続く東京株式市場に、やや底堅さともいえる動きが見られるようになってきた。2第2週(12~15日)、第3週(18日~22日)とも、日経平均株価は大きく下ぶれる局面は少なく、ほぼ堅調に推移した。そんな市場を支えた要因の一つに「政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド=SWF)が日本株買いに動いている」(市場関係者)との見方が広がっている。
2月中旬に中国の政府系ファンド社長が来日
政府系ファンドの動向が注目される(写真はイメージ)
東京証券取引所がまとめた2月第2週の国内市場の投資部門別売買動向によると、外国人投資家の買い越し額は1618億円に上り、週間ベースでは今年初めて買い越しに転じたことが分かった。外国人による日本株買いが相場の底堅さにつながったことがうかがえる。
市場では「日本株から逃避していた外国人が戻りつつある」との声が広まっている。しかし、外国人投資家の主役はかつてのようなヘッジファンドではなく、「政府系ファンドに移っている」(市場関係者)との見方も強い。
原油高に伴うオイルマネーや巨額の外貨準備でうるおう中東や中国の政府系ファンドは、サブプライム問題で打撃を受けた欧米の金融機関へ相次ぎ出資するなど、世界的な投資活動を加速化させている。
実際、その動きは日本国内でも急速に活発化している。2月中旬には、中国の政府系ファンド「中国投資有限責任公司」(CIC)の高西慶社長が来日し、渡辺喜美・金融担当相らと会談した。高社長は「国家意思に基づく投資はなく、純投資だ」などの方針を説明したとされる。
「日本の自動車や娯楽業界に興味がある」
また、中東の政府系ファンドの一角とされ、07年秋はソニーに出資したことで注目を集めたドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)のアナンド・クリシュナン最高執行責任者(COO)も同時期に来日した。クリシュナン氏は報道機関の取材にも応じ、「日本の自動車やエンターテイメント(娯楽)業界に興味がある」と述べ、日本に積極的な投資をしたいとの考えを示した。
クリシュナン氏らの発言が一部マスコミで伝わると、個人投資家も含めて日本株の買いが進み、日経平均株価が上昇する局面もあった。日本市場の売買の約7割を担うのが外国人投資家であるという現実の中、政府系ファンドが日本に関心を強めていることへの期待は高い。「政府系ファンドの動きは大きな刺激だ」(市場関係者)との声は高まっている。
ただ、政府系ファンドの一部には投資方針が不透明で、安全保障上の懸念が残るケースがあるのも事実。十分監視の目を向けることも必要になるだろう。