「座りション男」が急増して、難問が出現している。洋式便器の前方は短く浅くなっているので、男性が腰を下ろして用をたすと、尿が跳ね返ったり飛び散ったりしてしまう。この解決策にと、山形県の主婦が第3のスタイル「ひざ立ちション」を提案する新商品、その名も「天使のひざ枕」を考案。インターネットで販売を始めたところ、ちょっとしたヒット商品になっている。
いまの洋式便器は男性の「座りション」に向いていない
「天使のひざ枕」のネット販売が人気だ
「立ちションは男の特権」などという中・高年の男性もいないわけではないが、松下電工が2007年12月12日に発表した「トイレ使用実態調査」によると、1999年に85%いた「立ちション」派は、2007年には51%にまで減っていた。
「座りション」派が増えている背景には「清掃の手間」があるとされる。「立ちション」だと「うまく的に当たらない」「便器に当たった小便が飛び散る」などでトイレが汚れ、掃除する主婦にはたまらなく嫌だ、というわけらしい。
このため、便器メーカーのTOTOでは悪臭成分を分解する抗菌材を床に使用し始めた。松下電工では便器のコンパクト化や便座の開口寸法を従来より15ミリ大きくした315ミリにしたりと、商品の改良・開発に乗り出している。
しかし、どちらかといえば「掃除のしやすさ」にウエートが置かれ、肝心の「尿の飛散」の解決はできていない。それどころか、「座りション」派は増えているが、いまの洋式便器は前方が短く浅くできているので尿の飛散とともに、「油断すると(尿が)跳ね返って手についたりして不衛生」(快適・らいふ研究所)であることが指摘されている。そもそも、いまの洋式便器は男性が「座りション」をするようにはできていないのだ。
ご主人を「実験台」に、第3のスタイルを提案
そこで、快適・らいふ研究所の蒲生成子さんは「第3のスタイル」として、「ひざ立ちション」を提案。それを実現した商品が「天使のひざ枕」だ。考案者の蒲生さんは山形県白鷹町に住む主婦。「世の中のトイレをきれいにしたい」と、2年前から試行錯誤。建築設計事務所を営むご主人を「実験台」に研究を重ねて商品化に漕ぎ着けた。
商品を簡単に説明すれば、要はひざを載せるクッションつきの「台」。使い方は、この商品を洋式便器(もしくは床置き型小便器)の前方左右、便器底部のカーブにそって置くことで、その上にひざを載せて用をたすことができる。価格は1万6800円(税込み)だが、用をたすときの安定感もあり、嫌な尿の飛散もないので悪臭が漂うこともないと評判も上々なようだ。
2008年1月末からインターネットの楽天市場にショップを開き、販売を開始。モニターの人の口コミと合わせると、約1か月で100個を超した。当初は高齢者の利用を見込んでいたが、「購入者はネットを中心に、意外にも若い人が多いんです。若い人は『座りション』への抵抗がないようですが、尿が跳ね返ったりするのが嫌で、衛生面にうるさいこともあるようです」と分析する。これなら「座りション」のように、ズボンを脱いで用をたすわずらわしさもない。
掃除の手間がかからなくなることで、主婦などにもウケていて、「女性の購入者も多いんです」。蒲生さんのご主人は、「『立ちション』だの、『座りション』だのいう話は女性にははばかられると思っていたのですが、ネットの世界はそうでもないようで。売れ行きよりも、そのことに驚いています」と漏らす。