マルチ商法大手のニューウエイズの会員が、「子どもができないのも市販の大手メーカーの洗剤などを使っているからだ」などと暴言を吐いて勧誘していたことが、経産省の調べで分かった。同省は、会員がこのようなウソを繰り返していた違反行為で、同社を3か月の業務停止処分にした。同社でも、事実関係を認めて謝罪している。
「絶対もうかる」とウソを言う
栄養ドリンクのマキシモルソリューションズ
マルチ商法は、ネットワークビジネス、MLM(マルチレベルマーケティング)などとも呼ばれる。一説では、米国で始まり1960年代ごろに日本に上陸したと言われ、流通ルートを通さずに、口コミで商品を売っていくのが特徴。日本では、アムウェイ(米国)、「ミキプルーン」ブランドの三基商事(大阪市)が規模でそれぞれ1、2位を占め、ニューウエイズ(米国)は3位になる。ニューウエイズジャパン(横浜市)では、マキシモルソリューションズという栄養ドリンクのような商品名で、栄養補助食品、シャンブー、歯磨きなどを販売。ディストリビューターという勧誘のための会員が、約50万人いる。年間の売上高は、約600億円にも上る。
商法そのものは、特定商取引法上、連鎖販売取引と位置づけられ、規制対象であるものの違法ではない。しかし、ニューウエイズを巡っては、全国の消費生活センターに虚偽説明などの苦情が1年で1000件以上も寄せられている。経産省では、2007年9月に同社を立ち入り検査。しかし、その後も改善が見られないとして、08年2月20日、行政処分に踏み切った。不実告知などの同法違反で、翌日から3か月間、勧誘や新規契約などの業務停止を命じた。
同省消費経済対策課によると、次のような違反行為があった。
例えば、ある会員は、異業種交流会で知り合った人に「事業の立ち上げの話がある」と携帯電話で誘い、内容も教えずにセミナー会場に連れ込んだ。そこで、講師が「日常使っている商品は体に有害で、その影響が少子化社会にまで及んでいる」「ニューウエイズの商品には一切有害な成分は入っていない」などと説明した。さらに、この講師は、ポルシェの前で撮った写真を見せ、「高級車をプレゼントされる」と話し、会員になるよう勧めたという。
このケースについて、同課は、最初に勧誘目的をはっきり言わない、他社の製品は有害で同社の商品のみが安全であるとウソをついた、といった違法行為があるとしている。このほかのケースでも、会員になって友人の勧誘に成功しても、友人が商品を一定額以上買わなければ「ボーナス」が支払われないのに、「絶対もうかる」などとウソを言ったりする違反が見られたという。
ニューウエイズは会社ぐるみを否定
さらに、同課の調べによると、会員になるのを躊躇したり、断ったりすると暴言まで吐かれたというのだ。
例えば、アパートに住む主婦は、同じアパートの会員に勧われ、車で別のマンションに連れて行かれた。そして、50歳代ぐらいの女性会員が、商品紹介のビデオを見せるなどして、渋るこの主婦をこんこんと説得。煮え切らない態度に業を煮やしたのか、「あなたに2人目の子どもができないのも市販の大手メーカーの洗剤などを使っているからだ」と言い放ったのだ。この暴言には、主婦も参って、「もう帰りたい」と何度も訴えたが、「分かってくれないあなたは頑固だ」と怒り出す始末。結局、3時間も留まることになったという。
このほか、高校の同級生の会員から誘われた人は、勧誘グループ上位の別の会員に会わされて、より会員のグレードが高くなる20数万円以上の商品を買うように勧められた。お金を用意できないと断ろうとすると、「まわりの人は皆クレジットカードを持っていて、ローンを組めば借りることができる」などとして、消費者金融から金を借りることすら要求してきたという。
経産省による行政処分について、ニューウエイズジャパンは2月20日、ホームページ上でお詫び文を掲載した。J-CASTニュースの取材に対しては、広報担当者は、経産省から違反者の名前を通知されていないとしながらも、事実関係を認め、「厳粛に受け止めています」と話した。そして、会員による暴言については、「まことにお恥ずかしい話です」と答えた。
ただ、会社ぐるみの違反行為については否定し、「会員ディストリビューターの一部が不法行為をしていたようですが、会社として指示していたことはありません。社内では、違法行為は一切禁止しています」と説明した。一方で、会社としての管理責任は認めた。
なお、現在は、停止を命じられた勧誘や新規契約などの業務はしていないが、商品の受注、ショールームにおける営業などは続けているという。