外資規制に動く「福田内閣」を、日経新聞が「市場に背を向ける政治」「政権党の"先祖返り"」と強烈に批判している。つい先日は、経済産業省の北畑隆生事務次官がデイトレーダーや投資ファンドについて「最も堕落した株主」「バカで浮気で無責任」などと発言し、物議をかもしたばかり。現政権はバラマキ型の古い政治に回帰しつつあるのだろうか。
小泉政権時の「市場指向の改革」から後退している
日経新聞は「福田内閣」を「市場に背を向ける政治」と批判
2008年2月18日付けの日経新聞は、同社コラムニストの土谷英夫氏のコラム「市場に背を向ける政治」を掲載。コラムの副題は「『小泉以前』に戻すのか」で、福田内閣を小泉純一郎元首相の経済政策から後退するものとして批判する内容になっている。
コラムでは冒頭、冬柴鉄三国交相ら国交省幹部が持ち出した、空港会社への外資規制を盛り込んだ空港整備法改正案について、渡辺喜美金融相などの3閣僚が批判し、この3閣僚が町村信孝官房長官から注意されたことに触れている。
「もし、小泉純一郎政権時代だったらとつい考えてしまう。官邸にしかられたのは冬柴国交相や国交官僚の方ではなかったか」と疑問を投げかける。
さらに、ガソリン税の暫定税率の10年延長と59兆円の道路整備計画を主張する福田内閣の政策についても、「小泉政権下だったら、59兆円計画は『ふざけるな』と官邸からつき返されたのではないか」としている。
土谷氏は、小泉内閣時は「世界が一つの市場に統合されつつある『グローバル化』の現実を踏まえ、官業の民営化や規制緩和など『市場指向の改革』が必要との姿勢で一貫していた」として、市場もそれに応えて、日経平均株価は「右肩上がり」だった。が、「安倍政権下で勢いを失い、後はずるずると」といった具合だと分析している。
要は、現状の福田内閣が展開している政策が、小泉政権時の『市場指向の改革』から後退している、として猛批判する内容になっているのである。
「週刊朝日」(2008年2月29日号)でも、小泉政権時の「改革」推進役だった竹中平蔵・慶大教授が取材に応じ、日本の株価下落について、
「ともすれば『サブプライムの影響』という枕ことばを付けられますが、日本独自の要因があるんです。それが政府の改革姿勢の低下です」
と述べている。
「ガチガチで閉鎖的市場だというメッセージを出している」
同教授は、「改革が進む。日本が変わる。経済成長率が上がる。こういう思いが金融市場に伝われば期待が高まり、それに反応して株価は動きます」。その証拠として、郵政民営化を掲げた総選挙で自民党が圧勝し、政府系金融機関の政策投資銀行と商工中金の民営化が決まった2005年に、株価が40%上がったことを挙げている。
福田政権については、「(「改革を続ける」という)スローガンは正しい。だけど相変わらずアジェンダがない」と苦言を呈している。
金融アナリストの枝川二郎氏はJ-CASTニュースに対し、日経新聞の福田内閣批判について「賛成の立場」とした上で、次のように述べる。
「日本は貿易立国で栄えているのに、空港事業は外国人投資家に譲れないといって騒いでる人たちは何を考えているんでしょうね。市場へ与えるダメージは計り知れません。空港整備法改正案にしても、株式持合い強化にしても、『デイトレーダーはバカ』発言にしても、ガチガチで閉鎖的な市場だというメッセージを海外に出してしまっている」
小泉政権時は、経済政策のイメージが分かりやすく、外国人投資家にとっても魅力的なものになっていた。当時との落差は大きい、と枝川氏は指摘する。