米食品医薬品局(FDA)は「ボトックス」の使用によって死亡したり呼吸不全に陥るケースがあると警告した。日本では主に「しわ取り」の美容目的だが、厚生労働省が有効性と安全性を保証していない「適用外」となっており、「しわ取り」に多用されることに懸念の声も上がっている。
「しわ取り」料金は1箇所一回1万円程度
米FDAは「ボトックス」による副作用について警告している
米食品医薬品局(FDA)は2008年2月8日、「ボトックス」などを使った治療で、患者が死亡したり呼吸不全になったりするケースがあるとして、因果関係などについて調査に乗り出すと発表した。
この問題をめぐっては、米の消費者団体「パブリック・シチズン」が、「ボトックス」などの使用で死亡者が出たなどとして、FDAに警告するよう要求していた。
「ボトックス」は、筋肉を弛緩させる治療で使うボツリヌス菌毒素を応用した注射薬で、米アラガン社が製造・販売している。筋肉を弛緩させる以外には、「しわを取る」などの美容目的で、米国だけでなく日本国内でも多用されている。
「パブリック・シチズン」によれば、アラガン社などの製薬会社がFDAに提出した資料によって、97年~06年のあいだに「ボトックス」や類似製品「マイオブロック」による副作用が658件あり、16人の死亡例があったことがわかったという。
現地の報道では、「ボトックスで死ぬかもしれない」といった報道も出ており、美容目的での使用に人気の高い「ボトックス」への懸念が噴出している。
国内でも「しわを取る」として美容整形で使用するケースは多い。部位や注入量によって料金は異なるが、目尻や額などについては1箇所1万円程度で「ボトックス」の注射を受けられる美容外科もあり、手軽で、比較的安いのが人気につながっているようだ。その一方で、無資格でボトックス注射を行うなどの事件も相次いでいる。
厚生労働省によれば、医師による美容目的での「ボトックス」の使用は、薬事法上は認められているものの、同省が有効性と安全性を保証していない「適用外」となっている。「適用外」の医薬品についての副作用などについては、同省は把握していない。そのため、「有効性や安全性については、医師が責任を持って調査するなどして使用することになる」(医薬食品局審査管理課)という。
「美容目的での使用は保証の限りではない」
「ボトックス」については、日本では、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸の3つの症例について、厚労省から承認を得て、グラクソ・スミスクライン(東京)が、1997年から製造販売している。同社によれば、使用は講習を受けた医師に限られており、適正に使用されているという。
同社の製品広報はJ-CASTニュースに対し、
「ボトックスの使用はかなりの微量で、適正に使えば安全性が高い。発売してから国内での死亡例はない」
と説明している。
ただ、それもあくまで適用が認められている治療についての話で、美容整形での「ボトックス」の使用については、医師が個人で使用しているため、その実態は定かではない。グラクソ社製品広報担当者は、「美容目的での使用は保証の限りではない」とした上で、
「ほとんどは医師によって適正に使われているのだと思うが、無資格で使用するなど事件があるなかで、(適用外の)美容目的での使用については懸念している」
と話している。