12人の被告全員が無罪と確定した鹿児島県の公職選挙法違反事件をめぐり、鳩山邦夫法相が「冤罪と呼ぶべきではない」などと述べたことに、メディアから政治家としての資質を問題にする声が上がっている。また、法相の「失言」は過去に何度かあり、「福田首相の任命責任が問われている」という批判も出ている。
「これを冤罪といわずして何というのか」と朝日は主張
鳩山氏の発言は、2008年2月13日、全国の検察幹部を集めた訓辞の中で行われた。鹿児島県で被告全員の無罪が確定した公職選挙法違反事件(志布志事件)について
「志布志事件は冤罪ではないと考えております」
と述べた。同日午後には補足説明として、
「冤罪という言葉は服役後に真犯人が現れるなど、100%濡れ衣の場合を言う」
などと独自の見解を披露した。ところが、翌14日の衆院予算委員会で追及されると一転、
「今後公式の場では一切使うまいと思う。被告の方々が不愉快な思いをしたならば、おわびしなければならない」
と陳謝した。
この発言をめぐっては、新聞の一部からは、鳩山氏の大臣として、政治家としての資質を事実上問う声が上がっている。15日朝刊の紙面を見比べると、大手紙で反応したのは朝日、毎日の2紙だ。
朝日新聞は「仏の顔も三度だ」との見出しを掲げ、最初に志布志事件の捜査のずさんさを強調、「これを冤罪といわずして何というのか」と主張した。さらに、鳩山氏が発言を陳謝したことについては「前言を事実上、訂正したようにも受け取れる」とした上で、「法務行政を預かるトップの発言としては、なんとも浅はかで、軽すぎるというほかない」と非難した。さらに、失言が繰り返されていることについて、
「鳩山氏は安倍前首相によって法相に任命された。福田首相がそのまま再任した。しかし、ここにいたっては、福田首相の任命責任が問われている」
と、福田首相の任命責任についても言及している。
毎日新聞も、朝日新聞と同様に鳩山氏の発言の軽さと福田首相の任命責任について指摘。さらに、
「法相の発言は(冤罪の)再発防止に取り組もうとしている検察にも冷水を浴びせたようなもの」
と、発言が検察側に悪影響を与えることを懸念している。