早大名誉教授の大槻義彦さんに聞く スピリチュアル番組問題(下)
江原さん霊視の真偽 「実験」ですぐ決着はつく

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スピリチュアルは社会進歩を阻害する

――あとの2点は何でしょうか。

大槻 一つは、子どもたちが、学校で習う科学が番組で否定されて、どうしていいか分からなくなっていることです。中には、番組後に自殺する子どもの例が報道されています。埼玉県で2006年12月9日、中学2年の男子生徒が、数日前に家族で霊能番組を見た後、10階から飛び降りました。見つかった遺書では、番組を見た家族から「自殺したら生まれ変わることができない」と言われたことに触れ、「おれは生まれ変わる。もっとできる人間になってくる」と書かれていました。「オーラの泉」とは別の番組でしたが、具体的に被害が出ているのです。3点目は、スピリチュアルが社会進歩を阻害するということです。霊能番組は、あなたの運命は霊界で決められている、と洗脳します。しかし、人間は、頑張って教養豊かになる、体を大きくしたい、などと向上心があるので進歩するのです。だから、科学者の一人として黙っていられないのですよ。

――では、どうやったら、江原さんの「インチキ」を本当に証明できますか。

大槻 例えば、オーラの光や色が見えるということについては、いつでも研究室で彼の目を測定します。「ウソでない」というなら、ちゃんと対決しましょう。また、霊視についてなら、いつでも私が立会いの下に実験します。上野駅に到着した任意の人をつかまえて、江原さんに「この人を霊視して下さい」とお願いします。当たるはずはないでしょうから、必ず決着がつきます。そういう実験をさせてもらえるなら、文句は言いません。でも、絶対に応じないでしょうね。

――たとえ「インチキ」が証明されたとしても、スピリチュアル番組はなくならないのではないですか。

大槻 確かに、オカルトは、現代科学文明に咲いたあだ花で、批判が高まるとすぐに散りますが、また別の花が別の色で咲き始めます。しかし、私は絶望していません。人類は批判を通じて、少しずつ賢くなっています。100~500年前のシャーマニズムの時代に比べれば、科学的教養は進んでいるのです。私は、これまで20年間もオカルトと戦ってきており、宜保愛子、福永法源、織田無道といった方たちはすべて霊能番組から消えていきました。「オーラの泉」は今すぐに止めるべきですが、江原スピリチュアルも批判の高まりを受けて遠からず散っていくことでしょう。こうした問題は、急いで解決はできません。科学者が永久に批判し続けるしか、根本的な解決策はないのです。

【大槻義彦さんプロフィール】
1936年、宮城県生まれ。東大大学院数物系研究科修士課程修了後の63年、同大理学部助手。73年から早大理工学部教授を務めた。放射線の「水切り運動」を発見。火の玉のメカニズムを世界に先駆けて究明した。日本物理学会理事などを歴任。テレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」など多数のテレビ番組に出演している。オカルト批判の著書に、「反オカルト講座」(ビレッジセンター刊)などがある。ブログ「大槻義彦のページ」(http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/)も運営している。

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