物理学者でオカルト批判でも知られる早大名誉教授の大槻義彦さん(71)は、テレビのスピリチュアル番組の「インチキ」を暴く論陣を張っている。今回は、スピリチュアルがなぜインチキなのか、その理由を中心に聞いた。
文明国でありながら、市民教育が追いついていない
江原批判をする大槻義彦さんの公式ブログ
――大槻さんは、「江原今様イタコの嘘」(仮題)を鉄人社から出版されるそうですね。どのような内容になるのか、お話しできる範囲で教えて下さい。
大槻 麻原彰晃や宜保など従来の霊能者は、本を書く能力があまりありませんでした。だから、スピリチュアル関連の出版が少なかった。しかし、今は、こうした本の数がすごいことになっています。何十、何百万部と売れ行きがあり、ある意味でテレビ以上です。そこでは、様々な文化人が講演や本、対談で江原さんらと一緒にやっています。挙句の果ては、週刊朝日が2006年8月18、25日合併号で対談まで載せた。これまでになかったことです。私の本では、こうした多くの文化人が江原さんらに擦り寄っているという批判を展開しています。また、どうして霊が存在しないのかを科学の初歩から解き明かしています。
――本や番組を支えている読者や視聴者もいけない、ということになりませんか。
大槻 それはそうなんです。よくよく考えると、テレビを見る多くの女性たちに本がバカ売れする現状があります。テレビ局や出版社は、いかがわしいと思っても、視聴率を取るから、本が売れるからと手を染めてしまいます。実際、スピリチュアルを受け入れる多くの人がいることが問題で、とても残念なことです。その背景には、教育の不備があります。文明国でありながら、市民教育が追いついていない。教育者の一人として残念です。自分で判断してインチキと見破れる基礎的な能力をつけることが今後大事でしょう。
――大槻さんは、なぜ精力的にオカルト批判をなさっているのですか。
大槻 一口で言いますと、現代の科学文明・社会に極めて悪い影響を与えているからです。それは大きく3点あり、最も心配なのは、霊感商法につながることです。全国霊感商法対策弁護士連絡会が再三にわたってテレビ局に霊能番組を自粛するよう意見書を出していますが、それと同じです。テレビ局側は「江原さんは関係ない」と言うかもしれませんが、「オーラの泉」といった番組がコピーされて使われています。宣教ビデオとして使い、高額のお布施や寄付を要求しているのです。「霊の世界がある」と宣伝すれば、次に来るのは霊感商法です。だから、霊の存在が証明されるかどうかの公の検証番組が必要です。