未曾有の財政難に見舞われ、職員給与の大幅カットに踏み切る自治体が相次いでいる。もっとも、地方交付税減額などの政府の施策に不満を漏らす自治体が多い。しかし、市民は「給与カットは当然」と厳しい目で見ているようだ。
財政難は地方交付税減額が大きな原因?
大幅な給与カットを示唆した大阪府の橋下徹知事の公式サイト
「震災復興事業費の負担に加え、地方交付税の減額が財政悪化に追い打ちをかけているんですよ」
兵庫県は2008年2月6日、一般職職員の給与を月額で2.5~3%カットすることを発表した。その理由について、同県人事課の担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、上のように事情を説明した。
同県では、実質公債費比率が07年度19.6%と北海道に次いで全国ワースト2になった。この財政難を受け、管理職の給与も6~7%削減し、井戸敏三知事ら特別職の給与カットを拡大させた。井戸知事の場合は、年収が2613万円から約600万円も減ることになった。これは、約580万円の削減を見込んでいる北海道の高橋はるみ知事を越えて、都道府県では最大になるという。
自治労労働局によると、08年度に一般職職員の給与カットを決めたのは、47都道府県のうち、北海道、鹿児島などかなり多くの数に及ぶという。総務省の調べでは、07年4月1日現在ですでに19道府県が給与カットを行っていた。市町村も含めると、何らかの形で給与カットしている自治体は61.1%にも上った。同省財務調査課では、その背景には、財政難や自治体の個別な事情があるとしている。
給与カットを生んだ財政難は、どこも地方交付税減額が大きな原因なのか。自治労労働局の担当者は、J-CASTニュースにこう話した。
「確かに景気回復で、税収は伸びてきています。しかし、政府の三位一体改革をきっかけとした地方交付税の減額による財政の圧縮の方が大きいのです。1990年代前半にバブルが崩壊して景気が低迷すると、政府は景気浮揚対策を打ち出しました。国は借金が多いので、地方が借金で賄い、将来、交付税で面倒をみるということでした。しかし、国の借金がまだ多いため、地方財政計画の総額がここ数年抑制されています。そして、地方の借金が15年ほどたって返済時期を迎えたため、財政難に陥っているのではないかと考えられます」
どうやら国の政策に一因があるということらしい。
橋下知事「給料半減して当たり前」
兵庫や北海道などでは、知事が職員組合の激しい抵抗を遮って給与カットを決めた。自治体財政に詳しい関西学院大の小西砂千夫教授は、その理由として、借金財政に対する市民の厳しい目の存在を挙げる。
「『民間ではリストラがあって大変なのに、自治体は優遇され、ムダな金を使い過ぎている。だから、職員の給与を減らせ』という市民の声が大きくなっています。自治体から見れば、国がむちゃをして地方の財源を減らしていると考えるのでしょう。しかし、市民は、借金までして支出することはないと厳しい目で見ています。こうした世論を受けて、借金が大きい自治体では、財源が減っている中で給与カットしか逃げ道がなくなっているわけです」
このような市民感情に最も敏感なのが、大阪府知事に就任した橋下徹知事だ。橋下知事は、2月6日の就任あいさつで、約450人の職員を前に、
「破産会社の従業員であることを厳に認識してほしい。民間では、給料半減して当たり前」
と先制パンチを見舞った。そして、就任会見では、「財政非常事態宣言」を行った。橋下知事は、その後トーンダウンしたものの、就任前は一時、借金を一切しない方針を明らかにしていた。
北海道では、高橋知事の判断で、一般職職員の給与が、都道府県では最大の7.5%カットになった。それも08年度から4年間続きだ。また、07年度まで、2年間の「緊急措置」として、10%のカットをしてきたばかりだった。
こうした事態に対し、全北海道庁労働組合連合会の安居誠副委員長は、J-CASTニュースに「約束違反で、とても遺憾です。住宅ローンを払うため貯金を取り崩す組合員も出るなど、生活設計は大変な状況になっています」と話した。ただ、「道民の間に、財政が厳しい状況なのだから当然削減はやむをえない、という声が強かったのも確かです。だから、苦渋の選択でした」とも明かした。
前出の小西教授は、
「来年度決算から施行される地方財政健全化法は、本当に悪い自治体だけが当てはまります。大半は厳しい財政状況ですが、給与カットなどを通じて借金のピークを過ぎることができれば、少し状況がよくなるでしょう。財政再生団体になる自治体は、都道府県には該当がないようです。市町村では、10未満程度だと言われています
と話している。