聞いていないことを霊視するのが霊視
――江原さんは、公式サイトでフジテレビに騙されたと不満を言っていました。
大槻 女性がカウンセリングを望んでいない、美容院の経営が順調である、とは聞かされていなかったと江原さんは主張されています。が、聞いていないことを霊視するのが霊視でしょう。それはつまり、何も霊視できなかったことに文句を言っているようなものですよ。テレビ局がこの女性のデータを教えてくれなかったから、なんていうのは語るに落ちます。自分は霊視能力がないと言っているに等しく、私はとても驚きました。「霊の世界と交信」というのは、東北地方で霊能を業としているイタコの口寄(くちよせ)のようなものです。江原さんは、イタコのやることと同じなので、私は「江原今様イタコ」というニックネームで呼んでいます。スピリチュアルというへんちくりんな英語でごまかしているだけです。
――ところで、オウム真理教事件でスピリチュアル番組を自粛したテレビ局が、反省なく再び自粛前に回帰しているように見えますが。
大槻 当時は、テレビ局は反省の声明を出したんですよ。その中で、一番素晴らしいことを述べたのは、(オーラの泉の)テレビ朝日。宜保を抱えていた日本テレビは、とても消極的でした。今は逆転して、当時のオカルトテレビ局は下火になっています。しかし、霊能者から見向きもされなかったテレ朝や(27時間テレビの)フジが、霊能番組で大もうけしています。彼らは、声明に反したことをやっているんですよ。
【大槻義彦さんプロフィール】
1936年、宮城県生まれ。東大大学院数物系研究科修士課程修了後の63年、同大理学部助手。73年から早大理工学部教授を務めた。放射線の「水切り運動」を発見。火の玉のメカニズムを世界に先駆けて究明した。日本物理学会理事などを歴任。テレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」など多数のテレビ番組に出演している。オカルト批判の著書に、「反オカルト講座」(ビレッジセンター刊)などがある。ブログ「大槻義彦のページ」(http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/)も運営している。