東京地裁が日本マクドナルドに店長への残業代の支払いを命じる判決を下したが、今度はセブン-イレブン・ジャパンが店長への残業代支払いを決めた。しかし、外食産業などでは店長を管理職として扱い、残業代を支給していない企業がいまだに多く、対応は大きく分かれている。
コンビニ業界だけは残業代払う形に変更
セブン-イレブン・ジャパンは店長への残業代支払いを決めた
セブン-イレブン・ジャパンが2008年3月から直営店の店長に残業代を支払うことが2008年2月8日、明らかになった。同社の直営店に勤務する約500人が対象で、「管理職」としての位置づけは変えないが、管理職手当を減らす代わりに、残業代を支払う。同社は、入社2~3年の社員について、社員教育の一環として店長に就かせている。コンビニ業界の場合、ローソンなどは店長を非管理職として残業代を支払っている。
店長の残業代をめぐっては、店長を管理職扱いにして残業代を支払わないのは違法だとして、日本マクドナルドの埼玉県熊谷市の店長・高野広志さん(46)が未払いの残業代などを求めて同社を提訴。東京地裁(斎藤巌裁判官)は2008年1月28日、「店長は管理職にあたらない」として、同社に過去2年分の残業代など約755万円の支払いを命じている。
日本マクドナルドはこの判決を不服として控訴しているほか、同社の原田泳幸社長は、2008年2月7日の決算発表の記者会見で、
「店長は店の収益の管理や人材の採用など幅広い権限を持っており、年収の水準も十分だ」
と述べ、店長は管理職にあたるという考えを強調している。こうした考え方は外食産業には根強く、J-CASTニュースが外食産業大手などに聞いてみても同様の理由で、店長を管理職としているところが多い。
すかいらーくでは、店長は管理職で、管理監督者として残業代は支払われていない。ただ、業績に応じて職務給が支給され、それが年収に含まれる。マクドナルドに対して下された判決によって、制度が変わるのか聞いてみたところ、同社広報部は、
「今のところ急に制度を変えることはありません。店長の手腕によって、売り上げがプラス・マイナスするわけですから、店長は管理監督者です」
と話す。店長は年収もある程度の水準が保証されており、制度自体は問題ないとの立場だ。
残業代支払いは「世の中の流れを受けてのもの」
ファーストフード店モスバーガーを展開するモスフードサービスも、直営店の店長を管理職として扱い、残業代についても支給していない。
「(店長の)給与水準は平均的だと思っています。残業については、お客さん商売なので忙しい時間もある。ただ、勤務時間は自由裁量なので、それぞれコントロールしているはず。不満もこちらでは聞いてないので、問題ないと思っています」(広報・IR室)
衣料品のユニクロも、店長は管理職で残業代の支払いはない。しかし、店長に昇格すると年収が目安として2割ほど増えるほか、労働時間も基本的に1日8時間と規制されている。さらに、店長がある一定の限度を超えて出勤すると、強制的に休暇を取らせるなど、過剰労働の防止に取り組んでいる。
確かに、店長が管理職であることが、即過剰労働につながるとは限らない。ならば、なぜセブン-イレブンは店長に残業代を支払うことにしたのか。
セブン-イレブン・ジャパン広報によれば、店長への残業代支払いは、マクドナルドに対して下された判決とは無関係で、実は1年ほど前から社内で検討してきたものだという。同社は、
「世の中の流れを受けてのもの。プライベートと仕事の『ワークライフバランス』、健康管理などを重視し、労働時間の管理を強化するものです」(同社広報担当)
と説明している。