ロシア文学の名作、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』がいま若者の間で「カラキョウ」と呼ばれ、人気になっている。『カラマーゾフの兄弟』といえば、「世界で最も難解で読みづらく、長い小説」ともいわれていたりしたが、昨今こんな呼ばれ方をされるほど親しまれているのだ。一方、『源氏物語』を、現代風の「若者ことば」で再現する試みもネット上で始まった。どうやら、若者のあいだで「古典文学」が復活の兆しを見せているらしいのだ。
『カラマーゾフの兄弟』累計で60万部を超える大ヒット
ネット上で「源空」が人気(「2chまとめ」サイトより)
光文社から『カラマーゾフの兄弟』の新訳が刊行されたのは2006年9月のこと。07年7月に全5巻が刊行され、2008年1月までに1~5巻の累計で60万部を超える大ヒットとなった。新訳刊行以来、ブログなどでは、「カラキョウ」と呼ばれ、「読みやすい」「面白い」と評判を呼んでいる。
光文社翻訳出版編集部の駒井稔編集長はJ-CASTニュースに、
「古典はそんな簡単に売れるものではなく、長い年月をかけて売るものだと思っていた。それが増刷がとまらず、60万部を超えたというのは、古典のみならず、文芸の世界でニュースになった」
と話す。
同社は、『カラマーゾフの兄弟』をはじめ、古典の名作を「新訳古典シリーズ」として次々に刊行。「カラキョウ」以外の作品もかなりの好評で、仏文学の名作、サン=テグジュぺリの『ちいさな王子』、独文学のケストナー『飛ぶ教室』、伊児童文学のロダーリ『猫とともに去りぬ』、哲学のカント『永遠平和のために/啓蒙とは何か』が2万8000部を超えた。2007年5月に刊行した、ドストエフスキー『地下室の手記』も2万5000部を超え、好調という。
好調の背景は、これまで難解な言葉で表現されがちだった古典を「分かりやすい翻訳」で表現することにこだわったため。駒井編集長によれば、古典シリーズを購入するのは20代~30代の人が多く、そのなかでも女性に人気が高い、という。若者が古典を読むという現象が広がっているようなのだ。
「(古典は)当然書かれた時点では最先端の作品。それが残るということは、その時の最高の作品のなかでもさらに最高の作品。本質的に読まれ、再生産されるものだ。21世紀になり、殺伐としたニュースばかりが流れる世の中で、深いものを読みたいという潜在的なニーズがあるのでは」