苦情あっても中止できない理由 銀行の外貨預金キャンペーン

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   「外貨預金キャンペーン」を展開中の銀行や信用金庫が、キャンペーンを打ち切れないで困っている。急激な円高ドル安で、含み損を抱えるお客からの苦情が少なくないので、銀行等は支店のポスターやチラシをはずしたり、ホームページのトップページにあったPR広告をやめたりしている。できるだけお客の目に入らないように、というわけだ。こんなに「肩身の狭い」思いをしているにもかかわらず、キャンペーンを「やめた」と言えないのはなぜ?

年5%の表示なのに、もうけは10ドル

「外貨預金キャンペーン」はなかなかやめられない(写真はイメージ)
「外貨預金キャンペーン」はなかなかやめられない(写真はイメージ)

   ボーナス資金を当て込んで、外貨預金キャンペーンを展開している銀行は少なくない。円建ての定期預金は低金利なので、手元の資金をちょっとでも殖やしたいと思う人にとって、投資信託や外貨預金は投資の「入門」商品としてみているし、銀行もそのつもりで推進している。

   そんな外貨預金だが、この冬のボーナス資金を外貨預金に投資した人はいま、散々な目にあっている。07年11月の米ドルは1ドル120円前後だったが、それが08年1月23日には104円。3か月ほどで15~20円も円高になったのだ。

   1000米ドル(約11万円)以上の預け入れで「年5%」(期間3か月)で運用します――こんな謳い文句でボーナス資金を取り込んでいる外貨預金キャンペーン。「年5%」の表示でも運用期間は3か月だから、キャンペーンのスタート直後に預け入れたお客はそろそろ「満期」を迎える。1000米ドルを預けて、満期で得られる利息は10ドル(約1100円、税引き後)だが、これをいま円に換えようとすれば、円高による為替差損と為替手数料で、利息など吹っ飛んでしまう。

   クレームを持ち込むお客に対して銀行は、「いま現金化すれば損を確定することになるので、当分そっとしておく」ことを勧めている。満期日後は年0.5%前後の金利になるが、円安になるまで「塩漬け」にしておくしかないわけだ。

本音は「もう、売りたくない」

   ある地方銀行では、外貨預金は基本的には売らないという。その地銀の幹部は、「外貨預金は一番カンタンそうに思える投資商品だが、一番むずかしい」と話す。なかでも、都会ほど投資情報が氾濫していない地方では、「銀行が積極的に売らなければ、お客もそんなに関心は示さない」というほどで、需要が多いとはいえない。

   キャンペーンで勧めておいて、「まさか、お客に(預け入れた)タイミングが悪かったとはいえない」。さらに金融商品取引法では、「これから米ドルは上がります」などと誘導するような説明は「違法」の疑いがあるから、マーケット動向も説明しづらい。

   前出の地銀では07年9月末の金融商品取引法の施行以降、満期が到来した外貨預金から、できるだけ円建て定期預金に預け換えてもらうよう対応しているという。円が急激に上がる直前だったので、「結果的に(お客には)喜んでもらえた」そうだ。

やめれば、説明責任を「全うしていない」と受け取られる

   とはいえ、「塩漬け」を余儀なくされたお客は納得いかず、その声は苦情となって寄せられている。そんななか、展開中の外貨預金キャンペーンを、期間終了を待たずに打ち切りにする信用金庫が東京都内に現れて、銀行界では話題になっている。こんなことが話題になるのだから不思議だが、理由を聞けば「キャンペーンをやめた」といえば、顧客への商品説明が不十分だったことを認めることになり、金融商品取引法違反として行政処分の対象となるという。「説明責任を全うしていない」(銀行関係者)と受け取られかねないというのだ。

   それもあって銀行はキャンペーンをやめたくても、やめられない。だから宣伝を控えるしかない。「1ドル100円割れ目前。いまこそ円安期待で、むしろチャンス」(地銀幹部)との言い分も一理あって、ひっそりとキャンペーンを続行しているわけだ。

   金融庁は、「顧客からのクレームが入るのは、どこにでもあること。クレームの対応マニュアルの作成を急がせている」とし、苦情の未解決案件の数や対応の仕方を金融検査でみていくと話している。

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