日本たばこ産業(JT)が、中国産野菜の残留農薬についてのQ&Aをホームページから何の断りもなく削除していたことが分かった。JTでは、中国製ギョウザ中毒事件をきっかけにした措置であることを認めており、ネットなどで「何か隠そうとしたのではないか」とかえって疑念を生むことになった。
「お断り」などをサイトに表記せず
残留農薬の一文が削除されたJTのQ&Aサイト
JT広報部によると、ホームページQ&Aサイトの「加工食品について」には、次のような一文が掲載されていた。
「Q 中国産の野菜を使っているものがありますが、残留農薬は大丈夫でしょうか?
A 中国製にかかわらず、すべての原料は安全性を確認したうえで加工しておりますので、安心してお召し上がり下さい」
ところが、2008年1月30日夕に毒ギョウザ事件が公表されると、その日の夜になってサイトからこの一文を削除したのだ。その際、JTでは、「お断り」などをサイトに表記していなかった。そして、テレビ朝日がその後、ニュースで削除のことを報じて初めて、多くの人が知ることになった。
断りなく一文を削除したため、ネットでは、隠蔽などへの疑問の声が上がっている。これに対し、JT広報部では、J-CASTニュースの取材に対し、次のように釈明した。
「隠そうとしたわけではありません。冷凍ものを含めて加工食品は、原材料の段階では中国で農薬検査をしてもらっています。が、輸入段階でパックになった商品については弊社でしていませんでした。商品について一律に調査しているようにお客様に誤解されると考え、一時的に削除しました」
JTで農薬検査をしているのは、冷凍野菜など原材料のまま輸入されたものだけだという。しかし、「Q」を読むと、中国ではなく日本サイドで加工食品についても農薬検査をしているのか、という質問にも解釈できる。なぜ、その回答を「A」に入れなかったのか。
この点について、JTに聞くと、広報部の回答は歯切れが悪かった。「加工食品につきましては、農薬検査をしていませんので、一文の中に書き入れることができませんでした」。ただ、お断りを入れなかったことについては、「思慮が足りなかったかもしれません」と自らの非をほぼ認めた。
農薬検査「今後はやっていくべき問題」
ところで、輸入した加工食品に、農薬検査は不要なのだろうか。
厚生労働省の輸入食品安全対策室によると、食品衛生法上、輸入農作物について残留農薬を検査する規格基準のルールがある。しかし、加工食品については、そうした規格基準はないという。原材料の作物にさかのぼって、その作物が規格基準を満たし安全ならいいというルールはある。
厚労省の各検疫所でも、細菌数や大腸菌群、添加物の抜き打ち検査はあるものの、農薬検査は実施していない。とはいえ、同室の担当者は、「安全確認は、輸入業者の責務です。原材料の製造段階での取り扱いを確認したり、自主的に検査したりすることに努める必要があります」と話している。
こうした点について、JT広報部の担当者は、「加工食品の農薬検査をすべきであったかどうかを申し上げるのは、とてもつらいところです。今回、お客様や取り引き先に心配をおかけしたことを、お詫び申し上げたいと思います」と苦しい回答をした。
JTでは、輸入した加工食品については、受け入れときや出荷先で、毎回、細菌などのサンプル調査をしているという。加工食品の農薬検査については、「これまでしていませんでしたが、今後はやっていくべき問題だと考えています」と前向きの姿勢を示した。
Q&Aサイトで削除した一文については、書き換えた新しい文での再掲載を検討しており、検査方法などの対策が決まった時点でアップするという。「消費者の皆様に心配、不安を与えていますので、今は製品の自主回収、原因究明を第一に考えています。その後、安全、品質管理の体制が確立できれば、それぞれの製品の加工度合いをもとに、分かりやすく丁寧な表現に直す予定です」としている。