米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題による米景気低迷の懸念が深まる中、「米経済の減速が中国やインドなど好調な新興国経済に波及するかもしれない」(大手証券)との不安感が漂ってきた。2008年1月18日の米国株式市場を発端に、週明けの21日、22日と世界市場に株安が連鎖したが、特に日経平均株価急落を招いたのは新興国経済に対する懸念が大きかったとされる。
米経済が減速しても新興国が支えてくれる
サブプライム問題が新興国の経済に影響する可能性も
米経済が減速しても新興国経済が支えてくれるという「デカップリング(非連動性)論」は、サブプライム問題で揺れるさなか、世界市場にとっての大きなよりどころだった。米経済の落ち込みを新興国がカバーすれば、世界経済の悪影響は限定的だというものだ。新興国の需要増は原油高を招くうえ、中東のオイルマネーが欧米金融機関を救うことにもつながるとされる。
日本にとっても例外ではなく、07年9月中間決算で5期連続の増収増益を確保したのは、新興国向け販売が伸びたためだ。「たとえ対米輸出が減っても、新興国向け輸出で補完できる」(市場関係者)との声は多い。デカップリング論が日本企業の収益増への期待を高め、米経済の懸念や円高で下落基調にある日本の株価をかろうじて支えてきた大きな要因だった。
頼みの新興国経済が減速すれば、日本企業の収益鈍化は避けられない。21、22日の両日で日経平均株価は計約1300円も値を下げ、終値でも1万3000円を割り込んでしまったのは、新興国経済への不安感が最大の要因だ。
実際、「中国向け輸出が伸びているとはいえ、中国は部品を輸入して最終製品を製造しており、その最終製品が輸出される先は米国。米国に十分匹敵する内需が中国にあるとはいえない」(大手証券)との声もある。新興国経済への期待は過剰すぎるというものだ。