長谷川洋三の産業ウォッチ
王者の鉄則:GM会長は弱さを絶対見せない

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「われわれは勝つことが好きだ(We like to win)」

   米GM(ゼネラル・モーターズ)のリチャード・ワゴナー会長は2008年1月13日米ミシガン州デトロイトで開幕した北米国際自動車ショーで、トヨタ自動車に勝つ自信があるか尋ねた私に、微笑しながら落ち着いた表情で答えた。ちょうど1年前同じ質問に「われわれは世界No.1をあきらめていない」と答えたことと比較するとトーンは微妙に変わっていたが、競争社会においては決して弱さをみせてはいけないという王者の鉄則を垣間見た感じだった。

   ウィリアム・デュラントが1908年9月にミシガン州フリントにGMを設立してから100年。同じ年、T型フォードを世に送り出したヘンリー・フォードのフォード・モーターと激しい首位争いを展開しながら1931年に全米最大の販売台数を誇る自動車会社となったGMは、以来76年間にわたって世界一の自動車会社として世界に君臨してきた。トヨタ自動車が北米において着実に販売台数を伸ばし、GMに迫ってきても簡単にはトップの座を渡さないという意地を見せた。

   GMが23日発表した2007年の世界の自動車販売台数は前年比3%増の936万9524台。トヨタ自動車の同6%増の936万6000台をわずかな差で抑え、首位を守った。

   「われわれはUAW(全米自動車労組)とともに喜びたい」--。GMの中型セダン「シボレー・マリブ」が北米国際自動車ショーで「2008年北米カー・オブ・ザ・イヤー乗用車部門」を受賞した際、GMの代表者はこうあいさつし、「UAW」の文字をウインドーガラスに飾った。ショーには、トヨタ自動車の渡辺捷昭社長も、社長として3年ぶりに出席し、その存在をアピールしたが、世界一を巡る攻守がどうなるか、今年も予断はできない。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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