環境に役立つリサイクルが叫ばれるなか、使用済みの入れ歯をリサイクルしようとするNPO法人が登場した。入れ歯に含まれる貴金属が換金可能なのがその理由で、入れ歯1つあたり2500円分の価値があるという。この団体は収入を日本ユニセフ協会などに寄付し、総額はすでに1300万円に達している。
金、パラジウム、銀など貴金属が多く含まれている
このNPOは「日本入れ歯リサイクル協会」(埼玉県)。歯科技工所の役員や歯科医師などが集まって06年12月に設立。通常は、使われなくなった入れ歯はゴミとして捨てられるか、「死蔵」されるかだったが、これをリサイクルしようという試みだ。
実は入れ歯には貴金属が多く含まれており、これを換金して途上国の援助に生かしたい、というのだ。具体的には、部分入れ歯の場合、合金が約5グラム使われ、金、パラジウム、銀などで構成されている。これらを換金した際、おおざっぱに平均して1個あたり2500円の価値があるのだという。入れ歯1個を貴金属精製会社に持ち込んで換金しようとしても、精製・分析費用の方が高く付いてしまうが、まとまった数を一度に精製することでコストを抑え、収益を出している。
地方自治体に「回収ボックス」の設置を始める
協会では、当初は、汚れを落として熱湯消毒された入れ歯を郵送で受け付けていたが、07年6月からは回収率を上げるために地方自治体に「回収ボックス」の設置を始め、今では33自治体の施設に設置されているという。その他にも、16ヶ所の歯科医院でも回収ボックスが設置されている。
同協会では「金属の重さでカウントするので、回収した入れ歯の個数はわからない」としながらも、これまでに、日本ユニセフ協会に約1300万円、地方自治体に約86万円の寄付を実現している。
ただ、レアメタルの価格が高騰するなか、懸念されるのが「入れ歯の奪い合い」だ。念のため同協会に聞いてみたが、
「今のところ、そのような話は聞いていません」
とのことだった。