借りたら「墓場」まで追いかけられる
欧米ではこのような返済不要のスタイルが一般的だ。アメリカでは州ごとに法律が制定されているが、カリフォルニア州やテキサス州などでは日本のような返済の強制は違法になっている。また、そのような法律の規定がない州でも「家の売却代金だけでは足りないので、銀行が必死に取り立てをする」などということはまず許されない。銀行による消費者イジメとみなされるからだ。
一方、わが国では「たとえ家の価格が暴落しても、あるいは倒壊したとしても返済し続けなければならない」といった「理解」が常識となっている。たとえば、自然災害で家が倒壊したため新しい家を建てることになった人が二重に住宅ローンを背負う(ダブルローン)などといった話が報じられるが、こんなことがアメリカで起きたら暴動が起きるだろう。
これはすなわち欧米では貸し手の銀行が住宅の価格変動リスクを背負っていることを意味する。そのため住宅には火災保険や地震保険などへの加入が必須となる。家が壊れたら銀行が困るからだ。一方、わが国の住宅ローン審査ではとにかく借り手に定収入があるかどうかが決め手となるし、また借り手の返済能力を担保するために生命保険や保証人が要求される。つまり「あなたをどこまでも(墓場までも)追いかけますよ」ということだ。借り手(消費者)に厳しく、貸し手(銀行)にやさしいのが日本の住宅ローンなのである。
次回は、住宅ローンの税金と建築問題について述べてみたい。
++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。