株価の下落が止まらないなかで、「底値がどこか」が話題を集めている。日本経団連の御手洗冨士夫会長は2008年1月15日の定例会見で、「大底に近い状態だ」との見方を示した。米国の株安・ドル安の影響で日本の株式市場も1月16日で4日(営業日)連続の急落。ここまで下がると、どこで買いに入るかを考えるのは当然だ。投資家も「底値の気配」をかぎ分けようと懸命だ。
株主優待で実質利回り10%超も
投資家たちは「株価の底値」に注目している(写真はイメージ)
ある個人投資家は、「そろそろ底値かなと思ってはいるが、買ったあとに下がられてはたまらないし、もう少し様子を見ようかと…」とつぶやく。おそらく、多くの個人投資家の気持ちはそうなのだろう。
1月15日に2年2か月ぶりに1万3000円台を割り込んだ日経平均株価は、翌16日の終値も前日比468円安の1万3504円と、4日連続で下落した。
株価下落の最大の原因は米国のサブプライム問題をきっかけとした金融市場の混乱だ。米国の株安とドル安。欧米の金融機関の経営悪化、さらには資金が商品投資に回っていることや、日本の規制緩和推進策に停滞感が漂ってきたことに景気の後退感が鮮明になってきたことなどが指摘されている。
日本経団連の御手洗会長は15日の定例会見で、「企業の設備投資に過剰感はなく、IT関係を中心に市場在庫も高くないことなどから、日本企業の景況感は悪くない」と訴えたが、冷え込んだ投資家心理を「温める」には至らないようだ。
そうした中で、配当利回りや株主優待制度に着目した「銘柄選び」にも関心が高まっていて、日本航空や全日空といった航空券の割引や、東宝やオリエンタルランドといった映画館やアミューズメント施設の優待券、外食産業の割引優待券などは、町の金券ショップで現金化できることもあって注目されている。なかには「実質利回りは10%超のものもある」(個人投資家)という。
たとえば、全日空の株主優待割引券は、航空料金の50%を割り引くが、金券ショップでの買取価格は1枚4500円~5500円程度。日航で1枚3500円~5000円程度だ。
東京・新宿の、ある金券ショップは「株主優待券は、これまで友人にあげていたものを換金する人が増えてきたことはありますが、(株価との)関係があるかどうかは、正直わかりませんね」という。
株式の配当利回りと10年もの国債利回りはほぼ同水準
別の金券ショップは、「売りに来るお客さんはインターネットなどでよく調べています。比べてみて、買取価格の高いところに売りに行くようです」と話す。
金券ショップを展開する大黒屋は、「株主優待券を持ち込まれるお客様は、受け取るとすぐに換金されるので、5、6月と10、11月に増えるんです。数字には表れないのですが、ただ(株主優待券は)クローズアップされているので一部ではこの時期でも売りに行こうという人はいるのではないでしょうか」としている。
たとえば東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランド株を1株6400円(1月17日現在)のとき100株購入すると64万円。年間2枚の株主優待券(1DAYパスポート5500円)がもらえるから、単純計算で株主優待の利回りは2.0%弱。予想配当利回りは0.9%ほどで、それと合わせた実質では2.5%程度になる。
また、単に配当利回りに注目しても、株式の配当利回りと10年もの国債利回りはほぼ同水準にあるので、「投資のタイミングとしては悪くない」(大手証券の幹部)。下げ相場でこそ、配当利回りや株主優待に着目した投資が大きな効果を発揮するというわけだ。
1月18日午前の日経平均株価は、下げ幅で一時410円を超えて下落。東証1部はほぼ全面安の状況で、16日に付けた1万3504円を下回って推移している。まだ「底」は見えないようだ。