次世代DVDをめぐる規格争いは、米大手映画会社が相次いでHD DVD陣営から離脱する動きを見せたことで、ブルーレイディスク(BD)陣営が圧勝することが濃厚になってきた。しかし、ネットワークに置けばそれで十分で、ローカルのディスクに保存する必要が今後もあるのか、といった議論も浮上してきた。BD陣営の「勝利」は束の間かもしれない。
次世代DVDに勝つのはアップル?
「ブルーレイディスク」は本当に「勝利」したのか?
米映画会社のワーナー・ブラザーズは2008年1月4日、次世代DVDへのソフト供給について、ソニー・松下電器産業などが推進する「ブルーレイディスク(BD)」に一本化すると発表した。これまで同社は、「BD」と東芝などが推す規格「HD-DVD」の両規格で映画ソフトを供給してきたが、08年半ばからこの方針を変更することになった。
この大映画会社のHD DVD離脱は業界に大きな衝撃を与えた。08年1月8日には、英タイムズ(TIMES)電子版がHD DVD陣営の20社が、HD DVDプロモーショングループから離脱することを検討していると報じたほか、米映画大手パラマウント・ピクチャーズが、東芝などが推進するHD DVDからソニーなどのBDに乗り換える方向で検討していると、同日の英フィナンシャル・タイムズに報じられた。
映画会社からソフト供給がどの規格でなされるかが、次世代DVD再生機・レコーダーにとっては死活問題。しかし、どうやらBD陣営が単純に「勝利した」という話ではないようだ。
ジャーナリストのショーン・キャプテン氏は、英CNN(電子版)に掲載されたコラムのなかで、「iTunes」を通じて映画視聴が可能でネットワーク接続が可能なアップル社製「Apple TV」を挙げて、
「たった1つの芸当であるディスクを再生できる箱でしかないようなBD再生機などに比べればApple TVの全ての特徴が勝っている」
「私はアップルがこの戦争(次世代DVDの規格争い)に勝つだろうと予想する」
と述べている。また、1月6日のウォール・ストリート・ジャーナルも、次世代DVDが今後も求められるものなのかという疑問を呈しつつ、
「(BD陣営ソニーの)この勝利はハイコストに直面し、束の間のものになるかもしれない」
と報じているのだ。
国内では、07年の年末商戦でソニー・松下電器製のBDレコーダーの売り切れが相次ぐなど、次世代DVDレコーダーの市場拡大が注目されつつあったが、依然としてHD DVD陣営に浮上の兆しは見えない。
今後は「ネット対ディスク」の競争になる
調査会社BCNは2008年1月17日、「年末商戦デジタル製品市場動向」を発表。それによれば、07年10~12月の次世代DVDレコーダーの販売台数別シェアはソニーが59.6%、松下電器が27.0%、シャープが9.6%。一方、HD VD陣営の東芝は3.8%にとどまり、BD陣営とHD DVD陣営で比較すると「96.2%対3.8%」と、BD陣営が圧倒している構図は大きく変わらなかった。
BCNの田中繁廣取締役は、同日の記者会見で、ワーナーの「BD陣営への乗り換え」が国内市場に与える影響について聞かれた際に、
「コンテンツの品揃えを確保できるのかというのは、次世代DVDレコーダーの購入には大きく影響する。東芝にとってはこの影響は非常に大きいと思う」
と指摘している。田中取締役は、北京オリンピックまでに家電各社が次世代DVDに移行し、DVD・HDDレコーダー全体に占める次世代DVDの販売台数シェアは4割を超えると予測しているが、「それ(北京オリンピック)以降は分からない」と指摘する。
「米国では、ネットワーク上に映像を保存し、DVDなどに頼る必要はないといった動きもある。それを踏まえると、次世代DVDレコーダーが海外に広がっていくのかどうかが見えない。国産メーカーがローカルに保存するメリットをどのように説明するのかにかかっている。これからは『ネット対ディスク』という競争になっていくのでは」
次世代DVDの規格争いは、ほぼBD陣営に軍配が上がっているが、そもそも将来的に次世代DVDなどというものが必要なのか。BD陣営が真に勝利したとは到底いえないようだ。