産地や賞味期限などの「食品偽装」が相次ぐなか、こんどは業界ぐるみの「環境偽装」が明らかになりつつある。「日本製紙」が年賀はがきの古紙の割合を少なく偽っていたことが発覚したのに続き、日本郵政にはがき用紙を納入していた他の製紙会社4社も、すべて「偽装」に手を染めていたことが明らかになったのだ。各社は偽装の理由を「品質を保つため」と主張するが、この問題の経緯を見ていくと、そもそも再生紙ではがきを作ろうとしたことが「無理筋」だったのではないかという疑惑も浮上してくるのだ。
発売当初から「再生紙入り」のすべてが偽装
年賀はがきにも「偽装」は波及した
今回の「環境偽装」が発覚したきっかけは、2008年1月8日夜放送のTBS系のニュース番組「ニュース23」だ。同番組では、日本製紙社員から送られてきたという、同社が製造する年賀はがき用紙について
「公称40%の古紙配合となっていますが、当社では1%しか含まれていません」
との内部告発メールを紹介。同番組では、各地で年賀はがきを購入した上で専門家に分析を依頼。地域によってばらつきはあるものの
「本来ならは40%の古紙が含まれているべきところ、多くとも5%しか含まれていなかった」
などと報じた。
1月16日になり、さらに問題は拡大した。日本郵政会社が記者会見を開き、年賀はがきに限らず、すべての再生紙はがきについて、用紙を納入した5社すべてが古紙の割合を偽装していたことを明らかにしたのだ。
西川善文社長は、
「(各社の古紙配合率は)それぞれ40%に満たない、多いところで20%」
「平成8(96)年用の絵入り年賀はがきから再生紙化した、ということになりますが、その当初から40%には満たなかった」
などと述べ、「発売当初から、再生紙入り年賀はがきのすべてが偽装」であったことを明らかにしたのだ。
最初に問題が発覚した日本製紙は、同日夕方に記者会見を開き、中村雅和社長が
「環境偽装と言われてもしかたのないような事態を招いたと考えています」
などと謝罪、辞意を表明した。偽装の経緯については
「古紙パルプの配合比率を上げると、現状の弊社の技術レベルでは品質を犠牲にしなければならないという現実があります」
と、品質問題を挙げた。同社の説明を詳しくみていくと、
「葉書用紙が再生紙化された平成4(1992)年当時、工場内発生損紙も古紙として認識し、古紙パルプ6%と合わせた30%でテスト生産した結果、近い将来の技術革新で配合率40%の実現が可能と営業判断し受注を開始しました」
として、「工場の損紙24%を含み、かつ、技術が進歩すること」を前提として、古紙40%が可能だという判断をしたことを明らかにしている。
最初から業界は「期待されるような品質は無理」といっていた
ところが、この「損紙24%」を古紙としてカウントすることが認められないことが判明。ここで「古紙40%」は実現不可能だということになるが、中村社長によると
「コンプライアンスよりも、(古紙)配合率を下げて品質を確保することを優先」
した結果、1996年用の再生紙年賀はがきから「偽装」が続いてしまった、ということのようだ。
この背景を裏付ける証言をする人もいる。08年1月16日放送の「ニュース23」では、91年から、郵政省(当時)で再生紙利用を検討した会議の座長を務めた福岡克也・立正大学名誉教授が、このように語っているのだ。
「40%~50%が古紙利用の限界かな、ということになって、その部分まで、研究会として報告したんです。(製紙会社から来ている会議メンバーは)相当苦情を言ってましたよ。『リサイクル率を上げることはよくない』『期待されるような品質のものはできない』と」
いわば、「古紙40%」は、製紙会社にとっては「無理筋」だった、ということも言えそうだ。
日本製紙以外には、王子製紙、三菱製紙、北越製紙、大王製紙の4社の「偽装」が明らかになっている。いずれも、「古紙の割合を高くすると、品質が低下する」ことなどを偽装の理由として挙げており、業界全体として「元々、不可能な条件での発注を引き受けていた」ということにもなりかねない情勢だ。