米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題で世界的な株安が進む中、金や原油などの商品相場が年明け早々、相次ぎ史上最高値を更新している。本来なら株式などの金融市場に向かうはずの投機資金などが商品市場に続々と流入していることが最大の理由だ。商品相場高騰はインフレにもつながりかねず、経済の新たな不安材料として懸念が広がっている。
トウモロコシや大豆の先物も、原油高に伴って急騰
サブプライム問題が尾を引いている
ニューヨーク・マーカンタイル取引所の金先物相場では、年初から価格が急騰し、10日には取引の中心となる2月渡しの終値が前日終値比11.90ドル高の1オンス=893.60ドルと史上最高値を更新した。11日には一時、同900.10ドルと、初めて900ドル台に乗せた。東京工業品取引所の金先物相場でも9日、最も取引量が多い12月決済物の終値が、前日終値比37円高の1グラム3134円と、1984年3月6日の1グラム3121円以来、24年ぶりの高値をつけた。金は実質的な価値が目減りしにくい「安全資産」とされており、価格下落がとまらない株式市場などから逃避した資金が金先物相場に向かったものとみられている。
一方、同取引所では今年初の取引を迎えた2日、原油価格の指標となる米国産標準油種(WTI)の2月渡しが一時、ついに史上初の1バレル=100ドルの大台に乗せ、その後も90ドル台の高水準を維持したままだ。エタノールなどの原料となり、代替燃料として注目が高まるトウモロコシや大豆の先物も、原油高に伴って急騰している。シカゴ商品取引所では8日、大豆先物の7月渡しが一時、1ブッシェル(約27キロ)=13.05ドルと史上最高値をつけ、トウモロコシ先物の3月渡しも11年ぶりの高値だった。トウモロコシ先物などは元々上昇基調にあったが、原油高が拍車をかけた形だ。
サブプライム問題の収束がカギ?
こうした商品相場の高騰はいつまで続くのか。多くの市場関係者は「金融市場が混乱している間は収まらない。サブプライム問題の収束がカギとなる」と話す。サブプライム問題が落ち着きを取り戻し、米国の景気の見通しが改善しさえすれば、商品相場に向かっていた投機資金は金融市場に戻るとの見方は強い。
しかし、「相場高騰は簡単には収まらない」との見方も少なくない。急速な経済成長を続けている中国やインドなどの新興国で原油や穀物の需要が拡大していることが大きな根拠だ。複数の市場関係者からは、「もしサブプライム問題がうまく解決しなければ、景気減速と物価上昇が同時進行する『スタグフレーション』となる事態も予想される」との声も出ており、市場の警戒感は強まっている。