薄型テレビの心臓部であるパネル事業で電気業界再編の動きが急だ。従来の提携を組み替え、新たに「シャープ-東芝」「松下電器産業-日立製作所-キヤノン」の連合が誕生する。韓国・サムスン電子と組むソニーを含めた有力3陣営の体力勝負が始まる。
「勝ち組」シャープが東芝を引き込む
薄型テレビをめぐる「体力勝負」が始まりそうだ
最初に発表したのは「シャープ-東芝」だ。シャープが液晶パネルを東芝に供給する一方、薄型テレビ向けの最先端半導体を東芝から調達する。東芝は松下、日立と共同運営してきた大型液晶パネル生産会社への出資を解消し、パネル生産から撤退する方針。
シャープは薄型テレビ市場の「勝ち組」だ。ただ、テレビ事業への依存度が高く、テレビのつまずきが経営を揺るがしかねない。今回の提携で、資本提携したパイオニアに続いて、液晶の安定供給先を確保した。同時に東芝を自陣営に引き込むことにも成功した。
これに対し、東芝は半導体や原子力発電に経営資源を集中してきたが、薄型テレビてこ入れが課題だった。東芝は、次世代パネルの有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビの2009年度の量産化を目標にしてきたが、西田厚聡社長は「現時点では有機ELよりシャープの液晶が優れている」と述べ、09年度の量産化を見送る考えを示した。
続いて発表したのは「松下-日立-キヤノン」。松下とキヤノンが、中小型液晶パネルや有機EL開発を手がける日立の完全子会社にそれぞれ24.9%出資する。キヤノンはさらに出資比率を高め、過半数の株式を取得する。また、松下は日立や東芝と共同運営してきた大型液晶パネル生産会社への出資比率を引き上げ、過半数の株式を取得する。
松下は手薄だった液晶テレビも強化
松下はこれまで大画面を得意としてきたプラズマテレビを軸に販売を拡大してきたが、手薄だった液晶テレビも強化する。大坪文雄社長は「液晶の大型化が予想を超える速さで進行している」と説明。さらに、有機ELテレビの生産も視野に入れる考えを示した。キヤノンはデジタルカメラ向けなどの中小型液晶パネルや有機ELの強化につなげる。
一方、日立は07年9月中間決算で薄型テレビ事業が500億円近い営業赤字を計上し、自前でパネル生産子会社を維持することに負担感が強まっていた。古川一夫社長は「安定的な高収益構造を確立するため、経営資源の最適な配分を図る」と事業の「選択と集中」を進める姿勢を強調した。
薄型テレビの国内メーカー3強のうち、シャープと松下が提携に動いたが、残るソニーは既に韓国・サムスン電子と液晶パネルの共同生産に踏み切っている。ただ、ソニーの中鉢良治社長は報道機関のインタビューに対し、サムスン以外にも提携拡大を探る意向を示した。また、世界で初めて発売した有機ELテレビも大型化・量産化に取り組み、リードを維持する構えだ。