「コンビニ店などの深夜営業がなくてもOK」と回答した人が84%もいることが朝日新聞の調査でわかった。「地球温暖化を防ぐためなら○○のない世の中でもがまんできるか」という問いに対する結果なのだが、コンビニ各社はあまりの数字の大きさに、「深夜営業をやめたところで、CO2はほとんど削減できない」「調査のやり方に問題があるのではないか」などとアンケート結果に反発している。
コンビニ営業時間短縮で国民のライフスタイル変わる?
コンビニの深夜営業は必要か(写真はイメージ)
このアンケートは「暮らしと地球環境」をテーマにした朝日新聞の「定期国民意識調査」。2008年1月7日付けで発表した。地球温暖化のために「がまんできる」と回答があったのは「自動販売機」の84%に次いで「コンビニ店などの深夜営業」が83%だった。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)に加盟しているコンビニだけで07年12月現在で約4万2000店あり、そのうち94・4%が24時間営業店舗だ。朝日新聞はこの結果に、
「(コンビニの深夜営業の)浸透ぶりを考えると、地球環境に必要となれば手放すのも『あり』という答えの多さは注目に値する」
と書いている。このアンケートは、全国の有権者から選挙人名簿で3千人を選び07年11月17、18の両日に学生調査員が面接調査をした。有効回答は1千867人。
07年に環境省と経産省は、CO2排出量削減を宣言した京都議定書の目標達成に向け、産業界に削減目標の上積みを求めている。その中で浮上してきたのがコンビニの営業時間短縮の議論だ。コンビニの深夜営業を自粛し16時間営業などに短縮すれば、店舗の節電だけでなく、国民のライフスタイルも変わるだろうという声は政府内にもある。このアンケート結果が事実だとすれば、一気にコンビニの時間短縮に進む可能性も出てきたのだ。
しかし、コンビニ各社はこのアンケート結果に首を傾げている。セブンイレブン広報はJ-CASTニュースに対し、
「深夜営業のニーズは年々高まっている」
と指摘する。多様化するライフスタイルへの対応を強化したり、深夜でもお金を引き出せるATMの設置、危険の際に駆け込める「セーフティーステーション」機能など24時間営業だからこそ利用者のメリットは大きいのだという。そして、
「深夜営業をやめたところで、CO2が削減できるかというと、そうでもないんです」
というのだ。
「あまりヒステリックに議論しないほうがいい」
JFAは07年11月30日の中央環境審議会と産業構造審議会の合同会合で、コンビニが深夜営業をやめた場合のCO2排出量について報告した。報告では、深夜営業をやめても冷蔵庫や冷凍庫は動かさねばならず、照明と空調でCO2排出量を4.66%削減できるものの、深夜時間帯を利用していた商品配送を昼間に集中させると、トラック台数が増え交通渋滞になり、納品時間も増加する。物流部門でCO2排出量が0・9%増えると推計した。さらに、24時間営業をやめた場合、売り上げが2割程度落ち、雇用も減るためメリットはない、というのだ。
コンビニが深夜営業をやめられない理由は他にもある。ローソンは3年前に24時間営業の見直しを考えたことがあった。人口の少ない地域の店舗や、オーナー店長の労働に頼らざるをえない店舗に関しては、深夜営業をやめたらどうか、という検討だった。ローソン広報はJ-CASTニュースの取材に対し、
「検討は引き続き行っていますが、コンビニは24時間開いているのが一般的。仮に当社の店舗が深夜営業をやめたとしても、利用者は隣のコンビニに行きますし、そうなると便利なイメージが薄れ、売り上げが下がり、店舗は立ち行かなくなります」
と打ち明けた。
流通業界に詳しい三菱総合研究所の高橋衛主任研究員は、今回のアンケートや、コンビニの深夜営業廃止について、
「あまりヒステリックに議論しないほうがいい」
とJ-CASTニュースに語った。深夜営業をやめたとしてもCO2の削減効果はどれほどかわからないし、
「大都市以外では深夜に利用する人は限られていて、その数は少なく、アンケートを取れば『いらない』と答える人が多いのは予想できます。ただし、遅くまで働いたサラリーマンや、学生さんにとって、まさに『開いててよかった』存在なわけで、そういう人達のニーズは非常に高いのです」
ということだった。