長谷川洋三の産業ウォッチ
トップの心構え:トヨタ名誉会長変わらぬ引き締め発言

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

「日本が環境技術で先を行っているなんてあまり思い込まないことだね。米欧に限らず日本が学ばなければならない技術は世界中にある。外需が順調だといっても国内の自動車需要を掘り起こすことも考えなければならない」

   トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長は2008年1月7日、東京都内のホテルで開いた日本自動車工業会の恒例の賀詞交換会でひっきりなしに訪れる年賀のあいさつ客に応対しながら2008年の課題を尋ねた私にこう答えた。2007年に米GM(ゼネラルモーターズ)を抜いて世界一の自動車生産を記録したトヨタ自動車だが、勝ってカブトの緒を締めよ、の故事をトップ自ら実践する心構えを説いている。

   トヨタ自動車の2007年の世界生産台数は、前年比5%増の951万台。これに対しGMは前年比1%増の928万4000台で、トヨタはGMを抜き、日本メーカーとして自動車産業史上初めて首位に立った。ガソリン価格の上昇などを背景にトヨタの全販売台数の約3分の1を占め、最大市場の北米で燃費効率のよい小型車などの販売を伸ばしたほか、中国やインドなどの新興国でも販売拡大が続いたためだ。ただトヨタの4分の1を占める日本市場では、全体の新車販売台数が3年連続で減少し、25年ぶりの低水準となったこともあって、販売台数を減らし、約155万台に留まった。

   トヨタ自動車では、2007年12月25日発表した2008年の世界生産台数計画で前年比5%増の995万台と見込み、渡辺捷昭社長は世界生産の拡大とともにハイブリッド車など環境戦略を強化する方針を明らかにした。GMの2008年生産計画は約925万9000台で、2008年もGMを上回ることが確実になっている。

   1月7日開いた経済3団体共催の賀詞交換会に姿をあらわしたトヨタ自動車の奥田碩相談役は「1位になる時もあれば2位になる時もある。それが競争社会だ」と語り、競争力強化の手を緩めないことの重要性を説いていた。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


姉妹サイト