「自民、公明が熊谷、民主が橋下なら何の問題もないのだが…」
双方の主張について、大阪市立大大学院の北原鉄也教授(行政学)は、こうみる。
「ことさら大きな議論をするような論点ではありませんね。下妻さんのおっしゃるように、学校施設の整備は、一義的に市町村の責任です。また、道路などでもそうですが、都道府県は市町村を指導することができますので、橋下さんの考えも一理あります。グリーン化や子どもの教育のために、補助金などの政策誘導的な制度をつくってやるのは十分ありえます」
では、なぜこんな議論にもならないことでけんかしたのか。新聞各紙の報道を見ると、どうやら選挙の構図に原因がありそうだ。
これまでの府知事選挙では、太田房江現知事(56)のように、自民・公明・民主の与野党相乗りの構図が多かった。ところが、今回の知事選では、間近に迫ったとも言われる次期衆院選をにらんで、民主党が、推薦候補の元大阪大大学院教授、熊谷貞俊氏(63)を擁立した。対決ムードを盛り上げるためだ。それに財界が巻き込まれ、どちらについていいか悩んでいる構図なのだ。
しかも、財界としては、福祉や教育などを中心に一点豪華主義に近い考え方の橋下氏より、民主党が推す熊谷氏の方がいいらしい。熊谷氏は、赤字財政の建て直しや大阪経済の活性化などをバランスよくマニフェストに掲げてある。そして、兄の信昭氏は、大阪21世紀協会会長を務めるなど、関西財界とのパイプが太い。後援会では、元コスモ証券会長、関西経済同友会特別幹事をそれぞれ会長、副会長に据える。産経新聞の07年12月15日付記事によると、ある大手企業の役員は「与党の自民、公明が熊谷さん、民主が橋下さんならば何の問題もないのだが…」という本音発言を思わず漏らしていたという。
これに対し、橋下陣営では、元経済企画庁長官で作家の堺屋太一氏が08年1月7日、「橋下氏を知事にする勝手連」を立ち上げ、JR西日本元相談役、パソナグループ代表ら経済人を迎えて、巻き返しに懸命だ。選挙事務所の選対幹部は10日、経済団体の支援があるかどうかについて、「選挙初日ですし、そういった質問にはお答えしないことにしています。いろんな動きがありますので…」と含みを持たせた。
ちなみに、関西経済連合会の広報担当者は同日、「今日の時点では、中立です。先の先までは仮定の話として言えませんが…。戸惑いですか?なきにしもあらずです」と答えた。