最近では「金持ち、高級」といった文脈で使われることが多い「セレブ」という言葉だが、「モーニング娘。」の産みの親として有名な音楽プロデューサーのつんく♂氏(39)が、これに異議を唱えている。自身のブログで「芸能人やなりあがり系の人たちを指してcelebrityって呼んでいたのでは」などと自身のブログで指摘したのだ。
英語では「よく知られた人」「有名人」
つんく♂氏が「セレブ」の意味について問題提起した
つんく♂氏は2008年1月8日、自身のブログで、このように問題提起をした。
「最近、当たり前のように、聞く言葉「セレブ」
これって、セレブリティ(celebrity)
本来、言葉が持っている意味って、本当に高貴な人たちが、芸能人やなりあがり系の人たちを指してcelebrityって呼んでいたのではないでしょうか?」
最近「セレブ」と言う言葉が「高級」という意味で使われがちな風潮に異議を唱えた形だ。さらに、
「俺とかは、言われると『ちょっとどうなのよぉ~その言い方』的な気分になるということです」
と、自身が「セレブ」と呼ばれることに対する不快感も表明している。
では、元々の英語の「セレブ」とはどういう意味なのか。
英語辞典の中では最大とされる「オックスフォード英語辞典(OED)」で「celebrity」という項目を調べてみると、
「1. 習慣や儀式を十分守ること 2. 厳粛な習慣や儀式 3. 多く称賛されたり、話題になったりする状態 4. (1.~3.の)celebrityの(状態にある)人、公人」
などとある。さらに、これを簡略化した「Concise Oxford English Dictionary」では、「a well-known person(よく知られた人)」「fame(名声、有名なこと)」と、シンプルに説明されている。こうやってみていくと、少なくとも英語の辞書的な意味では、「セレブ」という言葉には、「成金」「お金持ち」という意味はなさそうだ。
J-CASTニュースで過去の新聞記事を調べた限りでは、「お金持ちな」といった意味で「セレブ」といった言葉が使われ出したのは、00年~02年頃。例えば、02年3月9日の朝日新聞愛知県版に掲載された校閲部発のコラム「ことば談話室」では、こんなやり取りが展開されている。
「A: この間、夕刊に『セレブに群がるカメラマン』とあって『ついに本紙まで』と思いましたね。
B: 何だい『セレブ』って。セレブレーション(お祝い)のことかい?
A: セレブリティー(有名人、名士)の略なんですが、女性誌にこれでもかというほど出てきます。『セレブ垂涎(すいぜん)……おいしい店』『セレブのお気に入りを拝見』『セレブなデニムでトーキョー☆クルーズ』……
B: なんだか意味不明。ついていけないなあ」
「カリスマ」という言葉が新鮮味を失い、代わりに登場?
同コラムによると、「カリスマ」という言葉が乱発されて新鮮味を失い、女性誌などが代わりに「セレブ」という言葉を多用するようになったらしい。コラムでは、「新語」に困惑している様子だが、この5年ほどで「セレブ」という言葉が、新聞紙面でも「お金持ちな・豪華な」という文脈で使われることが増えている。例えば、07年1月21日の朝日新聞(三重県版)では、松阪牛入りの特製巻き寿司が発売されたという記事に
「松阪牛入り セレブな節分巻き」
という見出しが付いているし、銀行が富裕層向けに店舗展開する、という経済面のニュースも
「白金にセレブ銀行」(06年4月21日、朝日新聞)
との見出しで報じられている。一般的に使われている言葉としては、「お金持ち・高級」という意味での認知が広がっている模様だ。
なお、07年12月に発売されたばかりの「現代用語の基礎知識2008」で「セレブ」の項目を調べてみると、
「有名人。名士。一流人。セレブリティ(celebrity)の略。『セレブな』は『有名な、一流の、高級な』の意」
とのことで、まだ辞書的な意味としては「セレブ=成金・成り上がり」ということにはなっていないようだ。