「12秒の脇見は異常運転」 福岡3児ひき逃げ判決に疑問

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   福岡市内で幼児3人が死亡した飲酒ひき逃げ事件で、福岡地裁が下した判決への評価が割れている。検察が求めた求刑の3分の1以下の懲役7年6月の量刑について、「12秒もの脇見運転は異常な運転じゃないのか」といった疑問が出ているのだ。

大澤孝征弁護士「これじゃあ酩酊以外にありえない」

判決を特集した新聞各紙の社説
判決を特集した新聞各紙の社説

   ひき逃げ事件の裁判では、検察側は、2006年8月25日の発生当時、福岡市職員だった今林大(ふとし)被告(23)が、酒に酔って正常な運転が困難だったとして、危険運転致死傷罪の適用を主張。その結果、同市の「海の中道大橋」でRV車に追突して博多湾に転落させ家族5人が死傷したとして、07年11月6日にひき逃げと合わせて最高刑の懲役25年を求刑していた。

   これに対し、福岡地裁は08年1月8日、検察側の主張を退けて、業務上過失致死傷罪を適用した。新聞各紙の報道によると、その理由として、地裁はまず、スナックからの約8分間、曲がりくねった道や交差点などで飲酒による蛇行・居眠り運転や衝突事故などを起こしていないことを指摘。さらに、被害者の車を発見して急ブレーキをかけ、ハンドルを右に切って回避しようとしている、事故の48分後の呼気検査で酒気帯びと判定されたものの、酒酔いがひどいといえない、ことを挙げた。

   ここで、司法関係者から異論が出たのが、脇見運転についての判断だ。福岡地裁は、正常な運転と疑わせるとしながらも、その区間は幅が3.2メートルもある直線道路で被告が通り慣れた道であること、この道に入ってから前に車が見えなかったことを指摘。脇見の事実をもって、正常な運転が困難とは認められないと結論づけた。

   しかし、TBS系で1月9日に放送された「朝スバッ!」で、元検事の大澤孝征弁護士はコメンテーターとして、次のように判決への疑問をぶつけた。

「12秒とものすごく長い時間、目を離していたんですよ。それも、事故直前に、時速100キロと制限速度の倍で走っています。本当に正常な運転だと言えますか。異常な運転ですよ。そこが判決のおかしい点です。1、2秒目を離していたのなら分かりますが、これじゃあ酩酊以外にありえないじゃないですか」

   また、朝日新聞も1月9日付社説「危険運転でないとは」で、異論を唱えた。今回のように大量に酒を飲んで正常な運転ができるとは思えないとして、「普通の人の常識に反していないだろうか」「今回の裁判所の判断には疑問がある」と主張している。

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