日本食ブームに乗って、海外で清酒が大人気だ。財務省の貿易統計(統計品別)によると、2007年11月までに1万98キロリットル、62億7502万円を輸出し、金額ベースではすでに06年の61億525万円を上回った。「国内の売れ行きが鈍い」(日本酒輸出協会)こともあって、地方のメーカーの出荷も増加している。輸出に加えて現地生産も拡大中だ。
「熱燗」で飲まれ、味はちょっと濃いめ
海外で清酒が大人気だ
米国で「松竹梅」を生産・販売する米国宝酒造は、カリフォルニア州にある清酒工場に8億円を投じて、5年後をめどに生産量を06年比1.5倍に引き上げるという。07年は前年比11.7%増加の2082万8000ドルを見込んでいる。米国の清酒市場の規模を1万5200キロリットル(2006年現地製造+輸入)と推定。年間8~10%の伸びをみせていることから、量産態勢を敷く。
宝ホールディングス(HD)によると、「清酒は当初、日系人や日本人駐在員が飲んでいたのですが、最近は米国人などのあいだで広がっているようです」と話す。広い米国にあって、カリフォルニア州はもともと日系人が多かったことや、カリフォルニア米の産地として、原料の米が獲れ、また水も悪くなかったこともあって、清酒を造り飲む土壌にあった。寿司のカリフォルニア・ロールのように、ブームの日本食とマッチするとの評判が広がったのも大きい。
売れ行きは西海岸が中心だったが、最近はニューヨークでも伸びている。「松竹梅ブランドの味を落とさないようにしていますが、現地では熱くして飲まれるようで、ちょっと濃いめですかね」(広報部)と、現地で飲まれる「味」で売っている。
地方の小さな清酒メーカーも輸出に参入
日本食ブームは欧州に「飛び火」し、現地での人気が上がってきたことで、宝HDは07年6月にパリに駐在員事務所を開設し、マーケット調査に乗り出している。ただ欧州では、「いまのところ現地生産ではなく、米国で生産したものをもっていくことで対応したいと考えていて、少しずつやっていきます」という。
「清酒の海外販売の歴史は案外古いんですよ」、というのは日本酒輸出協会。この協会には、「国士無双」の高砂酒造や「初孫」の東北銘譲、「月山」の古田酒造など日本各地の、中小の造り酒屋など25社が会員となり、協力して香港やニューヨークなどでテイスティングイベントを開催するなど、日本酒文化の啓蒙、宣伝活動を展開している。
協会によると、清酒の輸出は年々活発になり、「熱心な酒屋では売上金額の1割を輸出でまかなっているところも出てきた。なかでも高級ブランドの売れ行きがいい」という。
財務省関税局の統計では、07年11月までの清酒の輸出のうち、米国向けは3442キロリットル、31億806万円で、06年の3354キロリットル、30億6220万円を上回っている。5年前と比べると、金額ベースでは2倍以上増えている。国内の日本酒ブームが落ち着いてきたこともあって、海外、なかでも米国市場への期待は大きい。