商業用不動産
「銀座でまとまった土地が出たらカネをいくらでも出す」
2007年はサブプライム問題で揺れた1年だったが、住宅を除いた不動産市場は好調だった。特に商業用不動産の価格は世界のほとんどの大都市で上昇した。
しかし、物件の高騰によりニューヨークやロンドンの高層ビルなどではキャップレート(不動産の期待利回り)が極端に下がった。つまり、賃料がさらに上昇していくか、高く買い取ってくれる投資家が現われない限り、投資として引き合わないレベルにきた。
そのため、東京の不動産が「比較的キャップレートが高い」ということで海外投資家にとって魅力的に映るようになった。あるヨーロッパ人投資家などは「銀座でまとまった土地が出たらカネをいくらでも出す」などと言ってくる始末。
ところが、このところ都心でも一部で、とうとう賃料が下がりはじめた。これが相場の潮目なのか、あるいはサブプライム問題等による一時的な現象なのかは、冷静に判断する必要がある。
筆者としては、都心に関してはキャップレートの水準からみて暴落の危険性は低いと考える。しかし欧米の主要都市の水準は明らかに限度を超えており、これから本格的な調整が始まるとみている。それが世界の金融市場にどう影響するかを注視すべき時期が近づいている。
++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。