郵便局が販売している投資信託16本のうち9本が基準価格を割り込み、ゆうちょ銀行が個人投資家への説明に追われている。基準価格割れのファンドは2007年12月25日現在で、「野村資産設計ファンド2015~2040」や「フィデリティ・日本配当成長株投信」、「GS日本株式インデックス・プラス」などで、じつに半数以上が基準価格を割っているのだ。
苦情言う人はいないが「説明行脚」に追われる
ゆうちょ銀行が個人投資家への説明に追われている
ゆうちょ銀行は、社内基準により評価損が20万円を超える投資家には事情説明に歩いている。サブプライム問題が噴出した07年8月には約8万5000人がその対象となったが、「基準価格が割れたことで苦情を言う人はいません。むしろ、情報提供が遅れることを問題視されています」と、説明責任を果たしていることを強調する。「あのとき(8月)に比べて株価が戻ってきているので、(説明の対象先は)減っています」というが、相変わらず「説明行脚」に追われていることは確かなようだ。
そもそも少額貯蓄者のための「金融機関」である郵便局で投資信託を買う人は、比較的高齢で、しかも「初めて」という人が少なくない。「基準価格割れ」と聞いて、直感的に「損する」と思う人もいるはずだ。
さぞ苦情が殺到していると思ったが、ゆうちょ銀行は「基本的にクレームなどありません。購入されるときの、リスク説明を理解してもらえているのだと思っています」と説明する。
現在、郵便局で販売している投信では、日興アセット・マネジメントが運用する「日興五大陸株式ファンド」が1万1919円でもっとも高値をつけていて、最も低いのがフィデリティ投信の「フィデリティ・日本配当成長株投信」の8800円だった(12月25日時点)。
なかでも、「定年への備え」を「売り」に07年6月に投入した野村アセットマネジメントのターゲットイヤーファンド「野村資産設計ファンド」(2015~2040)は軒並み基準価格を割っている。運用期間が長いファンドほど、株式などのリスクの高い運用商品が組み込まれているので、株式市場が低調になって大きく割り込むことになったが、発売2か月ですでに9500円前後と基準価格を割っていた。
基準価格割れがイコール元本割れではない
フィデリティ投信は11月に販売しているファンドの一部にサブプライム関連銘柄を組み込んでいた商品があったことを公表。郵便局で取り扱っている商品には含まれていないが、やはり株式市場の低迷とイメージダウンがあったようだ。
05年10月に設定された「GS日本株式インデックス・プラス」も、9284円と基準価格の1万円を割れているが、この商品について、ゆうちょ銀行は「すでに分配金を払っているので、トータルでは元本を割れていないはず。基準価格は変動しますから、それで一喜一憂するのはいかがなものでしょうか。投信は中長期的な投資商品ですから、狼狽売りが一番いけない」といい、マスコミ報道が煽ってミスリードしかねないと指摘する。
しかし、「郵便局の利用は、地方、高齢者、投資初心者が圧倒的。そういう人に対して、あまりに気軽に声をかけてきた。(評価損について)地方に住むお年寄りなどに対して、納得してもらえる説明ができているとは思えない」(経済評論家の荻原博子さん)といった憤りの声もある。