「経団連会長として世界のしかるべき要人に会ってきたが、先進国の共通課題は税体系のありかただ。国内では大都市と地方の格差問題がひときわ深刻で、道州制の実現が焦眉の急だと実感したね」
2007年12月19日、東京・大手町の経団連会館で開いた日本経団連幹部と財界担当記者との恒例の年末懇親会で上機嫌で感想を語るのは日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)。一部に浮上している途中降板説を意に介さない表情だった。
「2期目はどうしますか」という私の質問にも「2期4年という会長任期を前提にヴィジョンも発表している」と早くも続投に意欲をみせた。
御手洗会長の途中降板説は、出身母体のキヤノンで表面化した偽装請負問題が経団連会長職として不適切ではないかという指摘や、衆参ねじれ国会で難しい舵取りが求められる政治とのつきあいで存在が示せていないなど、リーダシップの欠如が主な根拠。
奥田碩前会長(トヨタ自動車取締役相談役)が当時の小泉純一郎首相と固いタッグを組んで民営化や国際化など変わり目の日本経済再生にスケールの大きなリーダーシップを発輝したことと比較してタマが小さいという空気も底流にある。御手洗会長が日本経団連会長職に就任したのは2006年5月。2008年5月で1期2年の任期を終えるが、慣例では2期4年を務めるので2010年5月までが任期となる。
しかし積極的に御手洗体制を支援する空気は財界にもメディアにも見当たらず、このままでは御手洗降ろしの空気が強まって御手洗氏が任期半ばで自主的に会長職を降りるのではという観測も出るようになっている。