ドアロックかけず小5転落死 「逮捕はおかしい」との声

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   東京・練馬区の東京外環自動車道で、小学5年生男児(11)がマイクロバスから転落して死亡した事故で、埼玉県警高速隊は、バスを運転したサッカークラブコーチ男性(33)と男児をひいたトラックの会社員男性(25)を逮捕した。コーチはドアロックなどを怠り、トラックの男性はスピードを出し過ぎるなどした自動車運転過失致死の疑い。しかし、一方で、車の安全に詳しい専門家からは「逮捕はおかしいのではないか」との声も出ている。

「ドアを自動モードにする必要があった」と埼玉県警

コーチやトラックの男性の逮捕を伝える新聞各紙
コーチやトラックの男性の逮捕を伝える新聞各紙

   事故が起きたのは2007年12月24日夜。新聞各紙が埼玉県警の調べとして報じたところによると、練習試合帰りの少年サッカークラブ員24人を乗せたマイクロバスのスライド式ドアが開き、クラブ員の男児が外に投げ出されて、左側の走行車線を走っていたトラックにはねられた。バスを運転していたコーチは、ドアのモードを手動から自動に切り替えるのを忘れたうえ、ロックをかけていなかったという。男児は、転がったサッカーボールを拾いにドアのステップ付近へ行ったのではないかとみられている。

   この事故では、様々な疑問点がある。まず、ドアはレバーを引くと開くようになっていたが、なぜドアが開いて男児が転落したのか。さらに不思議なのが、県警がコーチやトラックの男性を事故後いきなり逮捕していることだ。かつて車の専門家らは、事故で救出されやすいようにドアロックは解除すべきと唱え、このことは社会的にもある程度認知されている。また、目の前に突然人が落ちてきて、果たして避けられるのか、というのも疑問だ。

   そこで、J-CASTニュースではまず、埼玉県警高速隊に聞いてみた。取材には、広報担当の副隊長が応じ、男児がなぜ転落したかについては、副隊長は「捜査中なので、答えられない」と話した。一方、なぜコーチやトラックの男性を逮捕したかについては、次のように説明した。

「コーチについては、手動、ロック解除のままにし、速度も出し過ぎていました。走行中にドアが開かないように、自動にする必要がありました。全体的に見て、安全に注意を払う義務に反していたということです。過失があって、1人が亡くなっていることを重く見ました」

自動車評論家は「今回は法的な問題はない」

   ドアロック解除の安全性のことを聞くと、副隊長は「だからどうだと言われても、答えようがありません。そうした議論は、この事故の件に直接関係がないからです。今回のバスについては、自動であれば運転席でしかドアを開閉できないということです。車によって違うため、ほかのバスについてのことは分かりません」と答えた。

   トラックの男性については、「制限速度を守って、前方を注意していれば、ひくことがなかった可能性が強いということです」と説明した。

   各紙によると、バスもトラックも制限速度40キロを大幅に上回る70、80キロ程度でそれぞれ走っていたという。

   以上のような埼玉県警の見方は、妥当性があるのか。車の安全に詳しい自動車評論家の岡崎五朗氏にJ-CASTニュースが聞いた。まず転落したことについては、岡崎氏は、「バスが揺れて、子どもがレバーに当たってしまったのかもしれない」と推測した。

   一方、県警がコーチやトラックの男性を逮捕したことについては、「おかしいと思います」と疑問を呈した。岡崎氏は、ドアロックすべきかどうかは、窓がたくさんあるかどうかなどケースバイケースとしながらも、次のように理由を述べた。

「外からの救出の点から見ると、ロックしない方がいいんです。むしろ手動であったかロックしたかは2次的な問題であって、座席ではシートベルトをさせておくべきだったと思います。車の走行中は、シートベルトを外してボールを取りに行かせてはいけません。これは基本中の基本です。しかし、道路交通法が改正されて、後部座席でのシートベルト着用が義務化されるのは来年からになるので、今回は法的な問題はないことになります。座席でシートベルトをしていれば、たとえドアが開いたとしても問題は起きません」

   トラックの男性については、岡崎氏は「道路には交通の流れがあり、高速道路でいきなり人が落ちてくれば、安全に避けることは難しい」と話した。

   転落事故を起こしたマイクロバスは、トヨタ自動車製だ。そこで、トヨタ広報部に、運転中はドアを自動にすべきかどうか聞いてみた。すると、答えはこうだった。

「取り扱い説明書や販売時の説明では、ドアの自動や手動の使い方に触れますが、走行中にどちらにすべきとは申し上げていません。使われる場合によって違いますので、その都度お客様の判断で選ぶのが適当だと考えています」
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