消費者ローンの規制を強化する貸金業法が2007年12月19日に施行され、消費者金融業界はいよいよ「再編待ったなし」となった。法律は多重債務者救済を目的に、悪質な消費者金融業者を市場から「退場」させるのが狙いだ。規制強化による貸出金利の引き下げや、グレーゾーン金利に端を発する過払い金の返還訴訟の増加などで収益を圧迫される消費者金融業者。いよいよ大手までも再編の波が及ぶのか。
貸金業法施行で「おカネを貸す人がいなくなる」
アイフルにも再編の波は及ぶのか
19日に施行された貸金業法は、消費者金融などが個人ローンを提供する場合の貸出金利について、09年末をめどに出資法の上限金利(年29.2%)を利息制限法(金額ごとの段階で年15~20%)と同水準とすることや、年収の3分の1を超す利用者への貸し出しが制限される(総量規制)などの規制が盛られた。
簡単に言えば、これまで貸していた人に貸せなくなったわけだ。これに加えて、利息制限法を超えて受け取っていた利息(過払い金)については、その返還を求める訴訟が相次いでいる。これらが、この1年で消費者金融業界の経営を急速に悪化させている。
とはいえ、法律が施行された以上従わないわけにはいかない。12月17日、大手消費者金の武富士が08年1月25日以降の新規契約者から貸出金利の上限を年18%以下に引き下げると発表。すでにアコムやプロミスは実施済みで、12月19日からはプロミスが適用を開始した。これで大手4社が出そろったことになる。
貸出金利を引き下げたことで、各社は「融資審査」を厳しくした。回収不能になるような、リスクの高い人には貸さなくなった。たとえば、アイフルの11月の成約状況をみると、申し込み約2万7000件のうち、成約件数は約1万件、成約率は36%だった。
同社に限らず、新規の成約率はなかなか上がってはこない。
貸金業者数は07年3月末で1万1832社。前年同月比で2404社減った。9月14日には、静岡市に本社を置く消費者金融のクレディアの経営が破たんした。上場する消費者金融の破たんは初めてで、業界は法規制の強化と過払い訴訟の影響の大きさをいまさらながらに思い知らされた。
GEがレイクの売却に動いているとの情報も
大手4社にも波は押し寄せているようだ。週刊ダイヤモンドは07年12月15日付で、「大手4社再編の引き金を引くアイフル経営危機説の深層」と報じた。「レイク」を展開する米ゼネラル・エレクトリック(GE)も、レイクの売却に動いているとの情報もある。
アイフルの経営危機説は自己資本が少ないことからきている。そうした中で、アイフルは住友信託に増資を依頼した、といううわさも飛び交っている。アコムには三菱UFJフィナンシャルグループ、プロミスと三洋信販には三井住友フィナンシャルグループというように、銀行の後ろ盾がないのもアイフルの弱点といわれる。つまり、いざというときの資金調達に不安があるわけだ。アイフルにとって、頼りの住信がいまひとつ明確な「支援」を打ち出せないでいることもある。
レイクはもっと深刻だ。GE本体がサブプライム住宅ローンの影響を受けて余裕がなくなり、いままでのような「資金支援」の可能性はない。宙ぶらりんの状態だ。 少なくとも、大手4社が買うメリットはない。そもそも消費者金融のお客は複数の業者からお金を借りているので、業界5番手、6番手あたりを利用するお客は大手4社からも借りているお客が多い。いま買収して、わざわざ過払い訴訟を増やすようなことはしないし、今後は「総量規制」がかかるのでお客がダブるのも困るというわけだ。
一時は「買い手」にアイフルの名前もうわさされたが、それはいまや消滅したようだ。消費者金融業界はどこも疲弊しているから、買い手など現れるようすもない。「相当安く買い叩かれる。そのときに手を挙げるところがあるかどうかだ」(消費者金融の関係者)とみている。