実際に会計してみるまで値段が分からない、すし店の「時価」という表示だが、これを廃止に踏み切った地区があった。ウニやアワビなどの高級すしだねは、日によって仕入れ値が大きく変動するための「時価」表示だったが、店内に価格を表示したり、事前に口頭で値段を伝えるなどして改善を図った。「明朗会計」に、「すし店に足を運びやすくなった」などと、消費者の評判は上々だという。
観光協会が寿司組合に改善を要望
すしも「明朗会計」への流れが進むのか(写真はイメージ)
今回の措置に踏み切ったのは、宮城県気仙沼市内のすし店20店が加盟する「気仙沼寿司組合」。組合によると、地域ぐるみで「時価」撤廃に踏み切るのは全国初ではないかという。
同市では日本有数の漁港である気仙沼港を抱えており、カツオの水揚げは日本1だ。年に約180万人の観光客が訪れ、フカヒレやサンマなどの魚介類、その魚介類を生かした「すし」を目当てにする観光客も少なくない。つまり、水産物は同市にとって有力な観光資源になっているのだ。
今回の措置は、この「観光」が背景にある。気仙沼市観光協会に「事前に値段がわからないと不安だ」との声が寄せられたというのだ。
2008年10月~12月には、JRの駅などで大規模に展開される観光キャンペーン「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」が予定されていることもあり、観光協会が寿司組合に改善を要望。
これを受けて組合では、07年6月の総会で、高級すしだねは、事前に値段を説明することを決議。10月1日から実際に「時価」の撤廃に踏み切った。
もっともこれまで「時価」表記をしてきた理由になっていた価格変動についてはなくなる訳ではなく、気仙沼でも「極端な場合、マグロでは価格の幅が2倍になることもある」(同組合の清水直喜組合長)という。
若い女性の客足が増えた
そこで、日替わりの価格を表記したり、例えば
「今日はいいネタが入っていて、●●円で提供できますよ」
と声をかけるなど、事前に価格を知らせる方法を各店それぞれ工夫しているという。
「時価」撤廃から2ヶ月近くになるが、清水組合長は、
「これまでは『値段が分からないのは怖い』という声もありましたが、最近では『安心して食べられる』という声を多くいただきます。特に、若い女性の客足が増えたように思います」
と話している。